第13話スパイVSボス

【東京スカイ戦争】が起こった日の翌日、愛知県小牧市某所にある秘密基地ではアゴノがドルクスたちとのこれからの向き合い方について考えていた。

「やはりドルクスには刹那とこれ以上関わることをやめさせなければならない、そして刹那をどうにかすることが平和へのカギだ。できるだけ彼女を生かしてあげたいが、最悪の場合は抹殺も視野に入れなければならない。」

アゴノは敵ながらも刹那にはこれからの未来に価値がある命として、なんとか悪行を止めさせて生かしてあげようとしていた。

そんなことを考えていたら、野木から電話がかかってきた。

「もしもし、野木さん?」

「ああ、アゴノ君。昨日はありがとう、おかげでいい記事が書けたよ。」

実は野木は遊撃隊が珠美をとらえる場面を撮影し、週刊発見に載せたのだった。

「それはどういたしまして、それで珠美について何か進捗報告はありますか?」

「警察は珠美に事情聴取をした結果、彼女がこれまでに事件に使われた爆弾の制作者であることが分かったんだ。彼女は元々マレーシアで暮らしていて、陸軍で爆弾作りについて学んだそうだ。そして六か月で軍隊を抜けてからは、出稼ぎのため日本に渡ったらしい。」

「そうか、それにしても半年しか軍にいなかったのが気になるが・・・?」

「いや、それはマレーシアの国民奉仕制度によるものだ。これはマレーシアでは国民の義務になっている。」

後でマレーシアの国民奉仕制度についてアゴノが調べると、抽選で選ばれた十八歳の男女が国防省の管理下で、六か月間共同生活するものらしい。

「そうか、それで他に分ったことは?」

「珠美はそれから仕事をクビになって二年前に刹那たちの組織に入って、それからは独学で爆弾を制作し続け、組織のために尽くしてきたといっていた。ちなみに組織に入ってからは、家族への連絡も仕送りもしていないようだ。珠美はそれから刹那がどれほど偉大で重要な使命を果たそうとしているか、刑事に熱く語っていたそうだ。」

「そうか・・・、刹那たちの組織の概要については解りませんでしたか・・・。」

「ああ、秋谷の時も組織のことについて警察は何もわからなかったそうだ。どうやら刹那はかなり信頼されているようだね。」

「とりあえず教えてくれてありがとう、また何かわかったら頼む。」

「ああ、それじゃあまたね。」

アゴノは電話を切った。

「やはりこちらから潜入するしかないか・・・。」

アゴノが考えていると、教授がやってきた。

「アゴノ君、君の下僕になりたいって人がいるよ。」

「は?下僕に・・・」

アゴノは首をかしげながら、教授のところへ向かった。












東京スカイ戦争もといデストロイゴールタワー作戦が失敗した影響により、刹那たちの組織の評判が下火になっていた。

『毎回、遊撃隊に阻まれて残念ですね~』

『東京スカイツリーが崩れ落ちるところ見たかったのに、期待外れでした。』

『やっぱり正義の遊撃隊には手も足も出ませんね~』

Twitterのコメント欄には、酷評で荒れに荒れていた。

「ぐぬぬ・・・、遊撃隊めーっ!!」

刹那は悔しい気持ちを机にドンとぶつけた。

「刹那様、お知らせしたいことがあります。」

松野が刹那のところへとやってきた。

「一体どうしたの?」

「それが、来馬さんがスパイしに行ってくるって・・・・いなくなってしまいました。」

「来馬が!?うそでしょ!?」

松野は首を横に振った、そして一枚の紙を手渡した。

「これは来馬が私に渡したものです、刹那によろしくと言って」

刹那は松野から紙を受け取った、そこにはこんなことが書かれていた。


『刹那、おれはこれから遊撃隊にスパイしに行ってくる。危険なことはわかっているし、二度と帰ってこれなくなるかもしれない。だけどおれは刹那との理想を忘れない、そして刹那のために邪魔をするあらゆるものを潰してみせる。だからおれのことは心配せずに、刹那はみんなをまとめて理想にむかってがんばってほしい。おれは必ず帰ってくる、そしてお前を心から抱きしめる。それでは行ってきます。』

                                   

刹那は勝手にいなくなった来馬を怒りながらも、私たちのために危険をかえりみずに行動していることに感銘を受けた。

「来馬・・・、全く心配かけて。でもスパイになってくれたなんて、とてもすごいわ。あの遊撃隊から何か一つでも情報が得られるといいけど・・・。」

「あいつ、詰んだな。」

ドルクスとシュウがやってきた。

「詰んだってどういう意味?」

刹那はドルクスをギロリとにらみながら言った。

「アゴノには顔を見ただけで、相手の情報と記憶を全て知ることができる能力ある。だからたとえアゴノに顔を割られていなくても、記憶を見られれば全てバレてしまう。」

「そんな・・・」

「シュウ、お前が来馬を止めなかったからだぞ。それにわざわざ変装アイテムを取り寄せて渡すなんて。」

「でも・・・、シュウもかなり強引だよ。止めとけって言っても、どうしてもやるんだって話を聞かないんだもん。」

「まあ、とにかくシュウはもう生きて帰ってくるのかどうか危ういな。」

ドルクスとシュウはそう言うと去っていった。

それでもシュウは帰ってくる・・・、刹那は強く自分に言い聞かせた。








「水戸雷太くんだっけ、どうして私の下僕になりたいの?」

「それはぼくが遊撃隊にあこがれているからです。」

そして青年はアゴノに自分の気持ちを伝えた。

しかしそれはかりそめのもの、その正体は遊撃隊に潜入しようとしている来馬である。

来馬ばシュウから取り寄せてもらった未来の変装アイテムで顔を変えて、「水戸雷太みとらいた」という偽名で遊撃隊に入ろうというのだ。

そしてアゴノは雷太の話を聞いてすぐ、遊撃隊に加入することを認めると雷太に言った。

「ありがとうございます、精一杯がんばります。」

「それじゃあ、君は虎鼓舞隊にメンバー登録しよう。デカン、よろしくな。」

「承知しました。」

そしてアゴノと雷太は下僕契約を交わした。

その後、アゴノはデカンクラッシュとアマジャーとジャッカルギーを呼んで、彼らに言った。

「単刀直入に言う、あいつは刹那の組織にいる来馬だ。」

三人はとても驚いた。

「えっ!!あれが、来馬ですか?」

「ああ、おそらくスパイとして来たんだろう。記憶を見たら、その準備のためにシュウに変装の道具を用意させていたよ。」

「アゴノ様!!でしたら早く捕らえないといけません、何をしでかすか・・・。」

「いや、逆にラッキーだ。こちらの味方にして、敵の情報を知る。」

「なるほど。でも味方にするといっても、どうやって?」

「これからシナリオを用意する、その前に三人には雷太に『スパイということは知られている。』と言ってくれ。こうすれば、多少は勝手に動けない。」

「承知しました。」

三人は頭を下げた。

「この事は後で全ての下僕たちに伝えておくよ。それじゃあ、よろしく。」

そしてその後すぐに虎鼓舞隊のメンバーで、雷太の入隊を祝う歓迎会が行われた。

「入隊、おめでとう!」

「ありがとう・・・、来て早々に祝ってくれるなんて、初めてだよ。」

「ハハハ、今日は楽しくいこう!」

たくさんの美味しい料理を食べて即興の芸を楽しんだ後、デカンクラッシュが雷太のコーラを注ぎながら言った。

「それにしても、まさか刹那の組織からうちにくるなんて、驚いたよ。」

「えっ・・・!」

雷太の表情が凍りついた。

「もう隠しても無駄だ、お前がスパイだということはオレたち、いやアゴノと下僕たち全員が知っている。」

デカンクラッシュたちが雷太をにらみつけた、雷太は衝撃すぎるピンチに体全体が動かなかった。

























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