第95話 シュン、大会後の祝勝会へ招かれるPart.2

「つまり、ただの勘違いです! わかりましたか!」


 ぷすーっと頬を膨らませ、眉間に皺を寄せるシュエリー。

そんな彼女の説明もあって、俺への誤解は解けた。


「す、すまなかったシュン君。この通りだ!」


 ミリアさんの両親は平身低頭とした姿でこちらに対応してくる。


「いや、悪気はなかったのは最初からわかってましたし。大丈夫ですよ」


 俺はあまりの変わりように若干動揺しつつ、彼らの腰を上げさせた。

一息つくと、モグモグと既に何かを口に含んでいる奴らがきた。


「シュンちゃんどうしたの〜モグモグ」


 はぁ、俺の親父たちは呑気に食事か。

全く、祝いというのになんだかストレスしか溜まってないような。


「シュンさ〜ん、さっきはすいません!」


 その声の方へ振り向くと、今までのイライラが吹っ飛ぶほどの美しさが目に映った。

肩までかかった鮮やかな紅の髪は、銀色のドレスと完璧に調和している。

だが美しさだけではなく、首から肩にかけての肌色がほのかに色気を帯びていた。

ミリアさんのその一挙手一投足は、しばらくの間俺の視線を奪った。


「ミ〜リ〜ア〜さ〜ん! あなた、めんどくさいこと起こした張本人のくせに生意気ねえ。このこのー」


 ……。

シュエリーさんは、ニヤニヤとしながら彼女を襲う。

胸やらなんやらと、色々いじくり回されて笑い声が漏れる。

困り顔の彼女と嬉しそうなシュエリーさん、いつもの光景だ。

まぁ、美しい姿もいいけどやっぱりいつもの感じの方がしっくりくる。


「そういえば、カリナはどうしたの?」


 ミリアさんはくすぐられ過ぎて、若干昇天しかけた顔を浮かべながら答えた。


「あちらです。どうやら、衣装を悩んでるようで。あ、皆さんもよかったら使ってください」


 なるほど、衣装部屋で着る服を悩んでいるんだな多分。


「そういうことね。じゃ、エミリー、ミエリー一緒に行くわよ!」


「うん! お兄ちゃん後でね!」


 あ、言い忘れていたけど。

シュエリーさんは双子ちゃんを連れて来たようだ。

嬉しそうに走り去っていく3人を見ると、やっと少し祝いらしさが出て来た気がする。


「そういえばミリアさん、なんかあそこに舞台みたいなあるけど。あれってぇ」


 そう言いかけると、目を光らせた彼女が迫って来た。

近い近い、唇も鼻も目も全部近い!


「よくぞ聞いてくれました! あれはですね、私の大ファンであるマナフェスさんが大道芸をするために設置したんです!」


「そ、そうなんだ」


「はい! お食事しながらマナフェスさんの芸を鑑賞、最高ですよね!」


「う、うん」


 マナフェスさんか。

色々あったけど、芸の準備を息子さんと楽しくしてる。

その様子を見れただけで、なんだかホッとした。

よーし、本当に大変だったけど、今日全部楽しんで憂さ晴らししてやるぞ!

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