第89話 カリナ、シュエリーたちと合流
どうやら間にあったようね。
私(シュエリー)は奥行きのある長広い部屋へ突入し、ブラストを瓦礫へ向けて放った。
「カリナ! 大丈夫?」
駆け寄ると、張っていた気力が抜けたのか足がもつれかける。
私は倒れないように彼女の手を掴んだ。
「......うっ!?」
しかし触れた直後、片方の瞼を閉じて痛そうな表情を向ける。
「シュエリーさん、カリナさんの指先......」
ミリアさんがそういうと同時に、私は察して手を離した。
彼女の両手に目を向けると、血がぽたりぽたりと垂れていた。
「あなた、他に怪我はないの?」
そういうと、彼女は微笑みながら答える。
「左目を毒でやられました。それ以外は特に」
「特にっていうか、十分重傷じゃない」
「それより、人質を早く牢屋から出して上げたほうがいいんじゃないか?」
エレファントの言葉に、カリナは小さく「そうですね」と呟やき指先を布で巻いた。
私とミリアさんは彼女の様子を心配しつつ、事情を聞いた。
__数分後__
「なぁにぃ!? 人を捕まえて召喚の生贄にしているだとぉ!? 許せん!」
エレファントは鼻からプシューと息を吐き、ドスンドスンとどこかへ向けて歩きだした。
「待ってください! どこへ行くんですか!」
ミリアさんは彼の太い腕を身体を使って引き留めようとするも、ずるずると床を擦りながら引きずられていった。
「エレファントさん、強引な手段を使わない方がいいわよ?」
「なんでだぁ! 小娘」
私がそういうと、エレファントは踏み留まりこちらを向いた。
「証拠はもうあるんだし、正当な処分が下されるよう手続きしましょう。戦いをこちらから仕掛ければ、逆に罪を被せられる可能性があるわ」
「ぐぬぬ」
エレファントがこちらにガンを飛ばすように見つめてくると、それを間でミリアさんは動揺して見守っていた。
「はぁ、わかったわかった。わしは所詮、騒動に自ら首を突っ込んでいるわけやし。貴様らに判断を任せる」
「ありがとう、エレファントさん」
ミリアさんはほっと肩を撫でおろしながら、会話に割って入る。
「でもシュエリーさん、カリナさんのその......」
彼女が言葉に詰まるのを聞いて、私はカリナの顔を伺った。
里を蹂躙され、同族を悪事の道具にされてしまった彼女の心情。
推し量れるものじゃない。
「そうね、本当は無理な行動は慎みたいけど......カリナ、あなたはどうしたい?」
彼女のこれまでの人生、その全ての原因であるイヴァン。
今すぐにでも殺したいというならば、私には止められない。
視線を切り、背を向きながら話始めた。
「私は......今まで多くの命を奪ってきました。恨みを持つ資格はありません」
「本当に、それでいいんですか?」
ミリアさんは心配そうに声をかけた。
「えぇ、仲間と受け入れてくれたあなた達のために、これからの人生を歩んでいきたいです」
「そう」
私はそれ以上何も言わず、彼女を抱きしめた。
「ありがとうございます。シュエリーさん」
胸に埋まる彼女の顔、胸部の服が少し濡れていくのを感じた。
「強いな、カリナという者よ」
エレファントさんがそうポツリと呟くと、カリナは顔を上げた。
「いえ、私は......」
「そうですよ! カリナお義姉ちゃんは強くてかっこいいです!」
「お義姉ちゃん?」
私がそう首をかしげると、彼女はえらく動揺して事情を説明した。
「ふーん、私だけに甘えてたと思ったのにな。女なら誰でもいいのね、ふーん」
そっぷ向いて見せると、彼女はこちらへ駆け寄ってきた。
「違います! ミリアさんがなし崩しというが強引に......」
「えぇ、酷いです」
慌てる彼女に、ミリアさんは抱き着いて上目遣いで悲しさを訴える。
「あ、いやそのごめんなさい。そんなつもりじゃ......シュエリーさん」
「ごめんごめん。冗談よ」
私がそう笑うと、他の3人も遅れてだんだんと笑みをこぼした。
カリナだけは痛みがあるからか、少し辛そうだ。
「そういえば、マナフェスさんのロケットペンダントからこちらの映像見えましたよね? こちらからもいけるんじゃないですか?」
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