第5話 勇者パーティー、ゴブリン討伐に向かう。視点、ミリア

 私は、勇者パーティーの弓使いをしているミリアです。


 先日、シュンさんがパーティーを抜けさせられてしまいました。

辞めさせられた理由は、戦闘で前面に出ないことだそうです。

確かに前面には出ませんがサポートで活躍していましたし、別に邪魔なんてこと思ったことはありません。

それどころか、私にとってはパーティーに不可欠の存在でした。

先が思いやられると考えながらも、私はパーティーの集合場所へ向かいました。


「集まったな、みんな聞いてくれ! 今日のクエストはゴブリン討伐だ」


 ゴブリン討伐、それならシュンさんがいなくても難しくなさそう。

でも油断は禁物、弓の最終調整をしてから行くことにします。


「やぁ、ミリア」


 突然、耳元で誰かが私に囁きました。

振り返るとそこにはカリブさんがいました。


「カ、カリブさん支度はもう大丈夫ですか? 私ももう少しで終わるので...」


「う~ん、今日も美しいなミリア。やはり君を見ていると癒されるよ。紅く美しい髪、バランスの良いプロポーション。本当に女神のようだ」


 カリブさんは私の手をいきなり触り、頬に擦り始めました。

「やめてください」と口にしても、彼は引いてくれません。

いつもはシュンさんがカリブさんの気を反らしてくれて助かっているのですが、もういないんですね。

これから会うたび耐えなきゃいけないと思うと、気が重くなりそうです。


「カ、カリブさん、ミリアさんも支度をしているのであまり迷惑は...」


 遠くから、カリブさんの身長と同じ程の大盾を片手で軽々と持つカタリナさんが現れた。

いつ見ても背が高く、凛々しくてかっこいいです。

そんなカタリナさんを見て、カリブさんは舌打ちをしました。


「うるせーぞブス! 引っ込んでろ」


 いつもながら、許嫁のカタリナさんに対してとても酷いです。


「終わりました、さぁ行きましょう」


 私はこのままではまずいと思い、準備を早々に終わらせました。

気を悪くしたカリブさんはカタリナさんのことを睨みつけた後、先頭を歩き始めました。


「ありがとうございます、カタリナさん」


 いつもは口数もあまり多くなく、控え目な彼女がシュンさんの代わりに庇ってくれました。


「気にしなくていいですよ。さぁ、私たちも行きましょうミリアさん」


 お礼をいうと、カタリナさんは笑顔で返してくれました。


◆◇◆◇◆


 ここがゴブリンの巣がある洞窟、中からモンスターの声がいっぱい聞こえます。


「何外で突っ立っているんだミリア」


「すいません、今行きます」


「ドラゴンキラー!!!」


 私が後を追って着くと、カリブさんは大技をゴブリン目がけて何度も放っていました。


「カリブさん、大技をそんなに何度も使って大丈夫なんですか? この洞窟結構モンスターが多いようですし、巣穴を見つけるまでは温存した方が」


 カリブさんは口笛を吹いた後、話始めた。


「大丈夫大丈夫。

こんな雑魚いくらいても余裕だって。

大技なんてなくても巣穴ぐらい楽勝だ」


 この時、私は少し不安を感じ始めました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る