第6話
「…きて…アリエッティ起きて…」
目を覚ますとそこは見慣れない部屋で一瞬戸惑う。
そっか私、寝ちゃったんだった…
体を起こすと隣にはケイトさんがいた。
「あっ、おかえりなさい…」
どれくらい寝たのだろう。
「今何時ですか…」
「8時」
「朝!?」
「ははっ!いや夜の8時だから」
ケイトさんはお腹を抱えて大笑いしている。
寝ぼけてしまってちょっと恥ずかしい…
「そういえば、寝顔可愛かったよ」
「ねが、かわ…な!?」
よだれは!?
目は半目じゃなかった!?
口空いてなかった!?
寝ている時の自分なんてどんな顔しているか分からないし、急に可愛いなんて言われたらどう対応していいか分からない。
あたふたする私を見てケイトさんはまたも笑っている。
「夕ご飯作ったから一緒に食べよ」
「作ったんですか?」
「作ったよ?」
王子なら、料理は国でも有数のシェフが作ってくれるので作れません!となってもおかしくないと思うけど、どうやら王子本人が手料理を振舞ってくれたらしい。
一階に降りると部屋中にいい匂いが広がっていた。
「わあ美味しそう…!」
サラダ、スープ、パスタ。ベーコンやチーズ、トマトの香りが食欲をそそる。
どことなくイタリア感がある。
そういえばこっちに来る時の景色も少しイタリアに似ていた。
もしかしたらセシーランドはイタリアがモチーフで作られたのかも。
なんて思いながら、料理を食べてみると、口いっぱいに美味しさが広がり、思わず頬が緩む。
「美味しいです!!」
「なら良かった。アリエッティは、普段料理とかはしないの?」
振り返るとちゃんとした料理を作ったのは調理実習でしかしたことが無い。
「しないですね…」
「しないんだ」
「やっぱりできた方がいいですかね?」
「できなくてもいいよ。全部俺が作るから」
セリフがイケメンすぎてキュンとした。
このままだと私がヒモ女になってしまいますが。
「やっぱりご飯は誰かと食べた方が美味しいね。普段は1人で食べることが多いから」
王子なのに…?
「1人で食べてるんですか?」
「ん?あ、そ、そう…!普段は使用人が作ってくれるけど、その料理とは別に趣味でね。そう、趣味」
そっか、今言われて気づいたけど、私たちって本当は普段から身の回りの事を使用人がやってくれるんだもんね。
…じゃあなんでこの家に使用人いないんだ?
この家は、暮らすには全く申し分ないけど、王が息子夫婦に与える家にしてはちょっと質素だし、お城から遠い。
もっと手厚い歓迎とか、パレードとか、結婚式とか、高価なプレゼントとかもない。
そこで私は感じてしまったのだ。
あれ、私たち……王から干されてる?
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