第6話 帰宅したら白イルカが消えていた。
「ただいま~」
ニラ玉の余韻を口の中に感じながら、
私は自分のアパートへと帰宅する。
「あれ…なんで」
キュイ!と白イルカの鳴き声が聞こえない。
「白イルカ~いるかな~?」
と、恐る恐る部屋中を探すも、
お風呂場にも、ベットの下にも。
何処にもいない。
「なんで!?なんでいなくなっちゃったの!?」
ニラ玉を食べてる場合じゃなかった。
あの子との時間を、もっと大切にすればよかった。
今朝、見送ってくれた白イルカを思い出す。
キュートで真っ白でもちもちな「はんぺん」のような。
(そっか。私、嬉しかったんだ……)
子供のころ好きだった白イルカが、
大人になった私に会いに来てくれた。
そんなミラクルに驚いて困惑して。
だけどそれ以上に、嬉しかったのに。
「うう……」
涙が出てきた。
やっぱり、私がつくったイリュージョンだったんだ。
だから、すぐに消えてしまった。
夢みたいな1日は今日で終わりだ。
「……」
こんなときに、御手洗室長から電話がきた。
私は涙を拭いて、スマホを手に取る。
「はい」
「鳴川、白イルカは?」
電話越しの室長の声は、
なんだか沈んでいるようだ。
「消えちゃいました…」
私が細い声で告げると、
室長も悲しそうな声で答えた。
「そうか。よかったというべきなのか。
…実はこっちも」
どうやら室長のペンギンも、消えてしまったらしい。
「それでな。鳴川は、なきしま水族館て知ってるか?」
なきしま水族館――
まさに、私がお父さんに何度も連れて行ってもらった、思い出の水族館だ。
「はい、子供のころ行ってました。そこで白イルカが大好きになって」
私が意気揚々と答えると、
室長は「やっぱり」と言った。
「俺も、なきしま水族館のペンギンが好きだったんだ」
不思議な偶然に、私はハッとした。
「え!それじゃあ…あの子たちは…」
なきしま水族館の白イルカとペンギンが、
関係しているのだろうか。
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