第8話

 ステラ姉さん…俺があの日戻ったせいで……死んでしまったはずなのに……


 俺は、目の前に浮いてる、ステラ姉さんから目が離せなかった。ステラ姉さんは、寝起きの時の顔をしていて両手で目を擦り背伸びをした後、教室を見渡し、複雑な顔をしてた。


(…り…ったか…)


 ん?今なんか頭に言葉が響いたような…ただ小さくてよく聞こえなかった。それより一体何が起きたんだ?


 俺が考えてたら袖を引っ張られた。ユーリが口をパクパクさせながら、何も無い空間に指を指してた。


「レ…レイジ…ウチおかしくなってもうたかもしれへん。さっきからあそこにな、白い虎が浮いとんよ…ひっ!? こっち見よる!」


 ユーリは、顔を真っ青にしながら、指を指して言ってきたが、いくら目を凝らしても何も見えなかった。もしかして……倫理的歯車エシックスギアの影響なのか?


 そう思いもう一度俺はステラ姉さんの方に顔を向けた。ステラ姉さんは、俺の顔を見るなりニッコリとして喋りだした。


(レイ! 制服すごく似合うじゃない♪ それに会わない間に、凄く逞しくなってるし!)


 あ…頭にステラ姉さんの声がすごく響いて頭痛が...


(あっ! ごめんね慣れるまでは、大声出したりしはしゃいだら、レイ頭痛くなるよね?)


 話し方も、仕草も、反応も、そしてこの優しさも、全て俺が知ってるステラ姉さんで間違いなかった。


「おーい! そろそろ先生は、話をしたいのだが?」


 そう言われ皆は複雑な顔で先生の方へ耳を傾けた。


「お前達のその表情を見ると、上手くいったみたいだな。同調コネクトすると自分にしか見えないが見えるようになる。その何かと言うのは、本人の深層心理にある想いとそして記憶から何が見えるか決まるらしい。それに、今見えてるのとは調律師として、すごく大切なパートナーになるから大切にしてやるんだぞ? でもそうなんだと理解しても、得体の知れないものが、周りに沢山居るってのは何かとストレスになる! そこで今から渡すデバイスが役に立つ! このデバイスとも同調コネクトしてもらう! と言ってもそれはこの機会を使ってやるからさっきみたいな事にはならないから安心しろ!」


 先生は手の平サイズの機械を見せながら説明してた。その後順番に呼ばれ先生の前に行くと手形みたいな線が書かれた板の上に右手を置くように言われ、置いた。 そしたら突如魔法陣が展開され板から伸びる線とそれに繋がってるデバイスが突如光だした。

 光はすぐに収まり魔法陣も消えてた。


「それじゃコレが君のデバイスだ! みんなに配り終わったら使い方を説明するから席で待ってなさい」


 そう言って取り外されたデバイスを俺に渡してきた。俺が席に戻ると、ステラ姉さんがはしゃいでた


(はぁ~♪ こうやってレイの晴れ舞台を間近で見れるなんて思ってもみなかったよ♪ ってなんで何も喋ってくれないのかな?)


 俺が返事しないのを不満に思ってるのか頬を膨らませ俺の方を見ていた。そもそも頭に響く声にどう返事しろと? それにそもそもコレは…


(本当にステラ姉さんなのか?)


(なにそれ?やっと話してくれたと思ったら、なんでそんなこと聞くのかな? レイもしかしてお姉ちゃんを忘れちゃったの? それだと私泣いちゃうよ?)


 あれ?もしかして今思った事が伝わった?俺はもう一度頭で思った事を念じた


(そもそもどう話せるか知らないんだけど?)


(できてるできてる♪ そうやって頭で言いたいことを念じたら会話できるし、周りに気づかれないのよ♪)


(すごく便利なんだね)


(あとは知りたい事とかあれば言ってね。 調べて教えてあげるから♪)


 そうか! それで昨日トールさんは、俺を見たまま確認が出来たのか。


「これで、みんなデバイスは手元に来たか? まだまだ教えないといけない事が沢山あるから、どんどんやるぞ!」


 そう言ってデバイスについて先生は説明し始めた。


 つまりこのデバイスを使えば相手にも自分が見えてるのを画面内とはいえ見せることが出来るというらしい。 あとはチップ?と言うものを買えばおやつを与えたりできるらしい。ただしチップは1度しか使えないらしい。それとデバイスには専用の数字が割り当てられており、その番号を使って遠くにいる調律師と連絡が取れるとの事。 なんかすごく便利なんだけど....


(そう言えば今までデバイスを使ってるところ、見た事なかったな?)


(村では、特に使う必要なかったからね)


(へぇー…って! お前は俺の深層心理と記憶から作られたんだろ? なんでそんなこと分かるんだよ?)


(もう! だからお姉ちゃんだってば!)


(だから!)


 俺はつい勢いよく机を叩いてしまった。


「レイジどないしたん? なんか怖い顔しとるで?」


「ごめんちょっと考え事してたから」


 俺は心配してきたユーリに謝り頭で話しかけた。


(とにかくコレについてはまた夜話そう)


(そうねお姉ちゃんも、あの日の事色々話さないといけないし)


 どうせその話も俺の記憶を元にするんだろうと、そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る