墜落

枝瀬

1話目

女の子と目が合った。

ここはビルの屋上。何日もかけて下調べした最適な場所、のはずだった。先客がいたなんて、今日はやめようか。


「いいよ、べつに。みてるだけ。」


声をかけられて、びくりと動きが止まってしまう。止めるとか、しないんだろうか。

彼女は本当に興味があってみているだけ、という顔をしている。


「いや、今日はやめておく。気分が削がれてしまったから。」


彼女をみてから、やる気が失せてしまったのだ。なんとなく、今日じゃない。


「そう、ごめんね。明日もくる?」


まるで遊びに誘う幼い子供のようだった。そのあどけなさに思わず頷いてしまう。僕がここにいる意味、わかってないのかな。女の子はさっさと帰ってしまったようでもう姿はどこにもない。


僕も帰るか。

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