なぜ私は心配するのをやめたのか。
口惜しや
自己完結
俺が死んだら悲しんでくれる人がどれぐらいいるのだろう。
そう思い一人勝手に鬱になる。
大して悲しいことがあったわけでもなくせいぜい人並みの苦しさを味わっただけの自分に対し不憫に思う。
なんだったら誰よりも満ち足りているはずの幸福も,まるでシーツでもかけて隠されたかのように見当たらない。
いつものことだとか、疲れていたんだなとか、自分に対する慰めをしようともせず自分から悲しくしようと自責の念がとめどなくあふれる。
心底情けない。そう思いまた鬱になる。それをまだ普通とも思えずひたすらに自分を責め続けるそんな女々しく気持ちの悪い恥の多い男だ。
民草とのとりとめのない合迎し続けるだけの会話に霹靂しつつも着々と時を重ねたある日。自分の影響力の程度を知り自分を気に掛けるもの好きもある程度いると知った。
嗚呼、なんて自分本位なんだろう。重ねて自責の念がこみ上げる。
だがそれと同時に幾千の言葉を用いても言い表せないような複雑な安堵が芽生える。急に心のどす黒いものが消えるような感覚がした。
「俺が死んだらちゃんと悲しんでくれるじゃないか」
まっとうな人生を歩んでいた民草が誰一人まるで反応できないような勢いで。
窓から地面へ自分の体を落とした。
落ち行く最中半生を振り返る。もっとありきたりな喜びを見つけるすべはなかったのかと。
まるでいくら手を伸ばしても月には手が届かないことを憂うように無理難題だと合点しそのまま重力に身を任せ。
もう何も考え自責をしなくてもいいのだと先ほどしたばかりの安堵とは比べ物にならないほど純粋な安堵のまま
なぜ私は心配するのをやめたのか。 口惜しや @kaa11081
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます