酒飲みの独白
金輪際
秋口のコンビニ
うだるような暑さも過ぎ、月も出ない夜8時。
湿度は高いが若干涼しい風で疲れた体を冷やしてくれる。
ちょいと一杯引っかける感覚が頭をもたげるが、店に入るほどでもなく、家飲みするにはちと暑い。
そんなときにふらりと寄れるコンビニ立呑み。
手に取る主役「黒星のラベル」(500ml)
伴うはホットスナックの代表「アメリカンドッグ」
そしてキムチ炒飯おにぎり
この3点で600円未満
役者は揃った。
代金を支払い、
「暖かいものと袋お別けしますか」
いつもの提案をいつも通り断り、クーラーのきいた店内から自動ドアを抜け、温い世界へ。
この店前の空間が今宵の立呑みフィールド。
小袋の中で早速汗をかき始めたロング缶を取りだし、プルタブを起こす。
パシュッ
心地好い音と共に余剰の炭酸が抜ける。
ぐびり、ぐびり、と渇いた喉へホップの香りを流し込む。
刺すような昼間の日光にいぢめられた体が、喉を中心に喜び奮える。
ここまでが一挙動。
甘露で喉を湿らせ、アメリカンドッグを取り出す。
ぽってりとしたフォルムに心中喝采をあげ、そのままかじりつく。
立てた歯から伝わるサクワフッ。
油気、柔らかな甘味、塩気。
ビールで清められた咥内に幸せが広がる。
もぐもぐ、ぐびり、もぐもぐ、ぐびりと、しばしこの快楽に酔う。
串から抜き取った最後の一口を、半分は嚥下し、半分は手に持つ冷えた幸せで流し込む。
名残惜しそうに残ったカリカリとしたおまけを、前歯のみで味わう。
カリカリ、カリカリ、カリカリ。
香ばしさを苦みで洗い流す。
まだ缶には三分割程の重みが感じられる。
串と入れ替えに、キムチ握りを取り出す。
フィルムを剥がすのももどかしく、半分ほど向いてかぶりつく。
微妙な辛さと、発酵の旨味。
それを残りのビールで補う。
あっという間に空缶となった幸せをに感謝しつつ、手に持つひとかたまりを平らげる。
一息深呼吸
幸せの残滓を丁寧に始末し、今宵の軽い酔いと共に、
いざ帰宅せん。
──今宵はここまで。
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