第3話
僕はしばらく自転車を走らせ、鬱蒼とした木々に守られた神社で足を止めた。
僕の勘が冴えていれば、この神社は「がぁこちゃんねるっ!」の撮影場所である。スマートフォンの画面を間近で見ていた彼らは気づかなかったようだが、あの動画にちらちら映っていたカルガモの親子は、この神社と近くの公園をテリトリーにしている。
僕は、汗でずり落ちた眼鏡を外し、日光の眩しさに堪えきれずに目をつむった。カッターシャツで顔の汗を拭い、眼鏡をかけなおす。
ガリ勉メガネ、と言われたことを思い出した。
僕はガリ勉ではない。
眼鏡も、近視だからかけているのではない。むしろ、視力は両目とも1.5だ。
日光や蛍光灯、ブルーライトなど光の類が苦手で、ブルーライトカットの眼鏡をかけている。ただ、家族と教師以外には言っていない。陰口のネタになるから。
「ガキよ、あんたも気づいちまったのかい」
メーデル・ハーデルは、蝉の合唱に負けじと声を張る。
「最近、ここに出没する者がいるんだよ。ありゃあ、俺の同類だな」
俺の同類。やはり、そうなのか。
僕はひとりで頷いた。
そのとき、あをによし音色がたゆたってきた。
べべん、と。
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