私の故郷は温泉街

睦月

第1話 私の想い

 全国的に有名な温泉街。 それが私が生まれ育った街だ。


 始めに断っておくと、私はこの街が好きではない。 ここにあるものは、温泉と旅館。 お土産屋に飲食店。山奥なので広大な山と川。 それだけである。


 近所の同級生と共に育ち、幼稚園からほぼ変わらない顔ぶれで中学校を卒業した。 同級生とは何だかんだ仲が良い。というか一緒にいても全く気を使わなくて済む家族の様なものだ。

  通りは観光客で割と賑わっているが、地元住民は街へ遊びに出かけている場合がほとんどだ。 ここでいう街とは、 電車で1時間30分もかかる、 他県の繁華街だ。 電車賃だって往復で結構な額になる。


「はぁー。 なんでこんな不便な所に住もうと思ったかなぁご先祖様は」


 教室の窓から広がる景色に向かって呟いた。


「そんなこと言ったってよ、しょーがねーよ。 高校卒業したら一人暮らしするんだな」


 隣の席の男子は私の方も見ずに答えた。この手の話題は何回も繰り返されているので、飽き飽きしているのだろう。


「花の女子高生なんだし、都会で遊びたいよ。流行りのスイーツ食べてお洒落したい」


 私の戯言に付き合ってくれるこの男子は優しい。皆似たような事を考えていても言わないから。


「遊ぶったって、藍里あいり。バイトとかしてねんだろ?」


「え? なに晴人はるとはバイトしてんの?!」


「俺だけじゃなくて他にも結構やってるぜ? 高校生になって一段落しただろ、それで勉強とバイト両立できそうって奴は始めてるんだよ」


 まじかー。知らなかった。てかそういう事は田舎なのに情報遅いんだよな。そんなところも好きじゃない。



「ねぇーお母さん、私バイトしたい。ってかするから」


「あんたはまた急だね…。他の子より勉強できる訳でもないんだから、ちょっとでも成績下がったらバイト辞めなよ!それならいいよ!」


 私のお母さんは、飾りっ気も無いし流行にも疎いけど、深く干渉してこなくてサバサバしてるところが好き。

 はーい、と雑な返事をしてスマホでバイトの情報を探してみる。えーっと、この地域で高校生も可と。うわ、私の地域バイト無さ過ぎ?!

 普通にコンビニとかスーパーで良かったんだけど、全然出てこない…。あとは個人の飲食店とお土産屋さんだけか。あーどうせならお洒落なカフェが良かったな。

 数少ない求人情報の画面を指でスクロールしていくと、1番下に異色の(この中では)バイトを見つけた。


「えっカラオケBOX?! 全然有りじゃん、なになに高校生可でシフトの相談乗りますって神求人だよ」


 幸先いい私ってツいてるなぁとこの時思っていました。人生大変なことが沢山あるって、高1の私にはまだわかってなかった。今なら少しは覚悟があるかな。

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