第3話 帰ってきた女盗賊
如月茜さん。女子バスケットボール部に所属する学年でトップレベルの美少女。明るい性格で誰とでも仲良くなれる。スクールカーストの最上位に君臨するプリンセスと言えるだろう。
朝の登校間もない時間。コソコソと如月茜さんに接近する俺。もちろん彼女のステータスを盗み見するためだ。その結果。如月茜さんのステータスはこれだ!
名前 如月茜
種族 人(女性)
年齢 16 体力G 魔力F
魔法 ー
身体強化 ー
スキル 隠密5窃盗5気配察知5
お宝探知5罠解除5死んだふり5
身体強化5毒耐性5麻痺耐性5
加速5短剣術5格闘5投げる5
アイテムボックス5鑑定5
異世界言語(万能)
称号 帰ってきた女盗賊
これは!明らかに異世界で第2王子に憑依していた俺のパーティにいた女盗賊と同じスキル構成!
じっくりと観察して。できればメモを取りたいが。さすがはスクールカースト最上位に君臨する美少女だけあって登校して直ぐにクラス中のイケてる男女に取り囲まれ始めた。やばい。俺みたいな者が居たら不審がられてしまう。
この学校はそこそこ優秀と言われているだけあって陰湿なイジメなどは無いが一軍、二軍、三軍の交流は分断されていて三軍の者が一軍のスターに話しかけるなど日直が一緒ににならない限りほとんど無いのだ。
目立たぬ様に如月茜さんから距離をとった俺は伊集院君と相談する。
「如月さんに話しかけたいけどどうしたら良いと思う?」
「日直が一緒になるの待ったら?」
「ええーそんなのいつになるかわかんない。っていうかウチのクラスの日直って出席番号順だから永久に一緒にならないよ」
「でも如月さんって超人気者だから朝も中休みも昼休みだって人に囲まれている。声をかけるならあの人垣を押しのけて行かないと」
「そうなんだよね。でも俺の飛ばされた異世界においては俺のパーティメンバーだった女盗賊(恐らく)。声をかける資格は多分あるよね」
「おお。さすがは勇者。僕は魔王だから遠くから御子柴君の活躍を見守っているよ」
「そう言わないで一緒に来てよ伊集院君。如月さんも俺と同じ『鑑定』を持ってるから俺と伊集院君が一緒にいた方が話が早いと思うんだ。お願い」
結局。渋る伊集院君を引き連れて。6時限目の授業終了後に如月茜さんが女子バスケ部に行く前に声をかける事にした。
元々オタクで最底辺に居た俺だけど一年もの長期にわたって第2王子に憑依していたせいか。あるいは異世界のチート的能力を手に入れたせいか。やや行動力が培われたものと思われる。
「如月さん。今から部活に行くところごめんね。ちょっと話があるんだけど良いかな」
如月茜さんはこちらに振り向いて俺たち二人を交互に見て。さすが社交的な誰とでも仲良くなれる美少女。微かな微笑を保ちつつも明らかに警戒している。
「あれ。御子柴君とー。伊集院君? どうしたの」
「如月茜さん。今日あなたに声をかけたのは大事な話があるからだよ。僕たち二人のステータスを見てごらん。僕たちの用事が何なのか。分かるよね?」
伊集院君が勝手に先走ってなんて事を!まるで魔王のような物言い。これでは悪役じゃないか!
如月茜さんは微笑みの中にも「何なのこのオタクは?」みたいな顔をした直後にハッとした顔をして。伊集院君の顔をジッと見つめて驚愕。
その後俺の顔をジッと見つめて更に驚愕に目を見開き小さめのお口をポカンと開けてフリーズした!うーん。可愛い。さすが学年トップクラスの美少女。驚愕に染まったお顔もプリティです。
しかし女盗賊か。同じパーティで約一年間過ごしたけど第2王子には靡かなかったんだよな。かといって騎士団長にも宮廷魔導士にもつれなかった。
なるほど如月茜さんなら納得だ。日本でモテまくってたからね。パーティの男どもは外見や地位はそれなりだったけど騎士団長は脳筋の馬鹿。宮廷魔導士は根暗で陰湿なオヤジ。第2王子は調子に乗っているだけの底の浅い小僧。聖女にチヤホヤされて鼻の下伸ばしていた自覚あるし。
うーむ。そう考えると俺の異世界勇者としての各種行動は客観的にみるとかなり痛々しいものであったかもしれない。
ようやく如月茜さんのフリーズが解けて声を発した。
「い、い、伊集院君。御子柴君。あ、あ、あなったたちは。何を知っているの?」
うん?変な質問。何を知っているって。それをお話しようと思っているというのに。
「あなたの全てですよ。特にこの御子柴君はあなたの。ここ一年間の行動をつぶさに観察してきた男。まさに!すべてを知る男といっても過言ではないでしょう。例えばあなたが女とうぞー」
「わーわー!!分かったから! 今からカラオケ行きましょう。お金持ってる?持ってなかったらアタシが奢るから。さ、行くよ! 美咲!悪い今日は急用できたから部活休みます!うまいこと説明しといて。ごめんね!」
こうしてスクールカースト最底辺のオタク二人は学年トップクラスの美少女如月茜さんの奢りで一緒にカラオケに行くことになった。
そして周りでこの会話を聞いていた同級生たちは。怪しげなオタク二人と可憐な美少女の間になされた会話をつぶさに記憶して若干の脚色を加えつつ急速に拡散させていったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます