第2話 ミッション『入浴介助』〜何でも食べる男性利用者編
利用者さんで何でも口にしてしまう男性がいます。手に触れるものはなんでも。
服の襟、裾、袖。座っている車椅子周辺の手が届く範囲のもの、全て。
寝かせたベッドでも手が届く範囲のものは全て、彼の犠牲者となってしまうので要注意です(枕の事件もありましたが次回の話しで)。
彼はシャワーチェアでも入浴できますが意思疎通が難しいのでベッドのような台にのせて入浴です。
ただでさえ、彼は胸を隠したり下半身をブロックして洗わせてはくれません。
あっちを向いたりこっちを向いたりと一瞬でもじっとはしていない……。
加えて、スキあらば何か口に入れようとする。もの凄く大変です。誰も彼の入浴介助はやりたがりません。
職員のメンツからみてもだいたい私が担当となります。
足から順にお湯をかけていき、陰部をある程度洗って……洗わせてはくれないから彼の両手を重ねて私の肘で軽くおさえて軽く洗って……から再び、胸、頭とお湯をかけて身体をならします。
シャンプーを手にとり泡立てて頭につける。素早くしないと彼は泡を手にとり口に入れてしまいます。
頭が終わると更に大変なミッションが。
身体の洗いです。洗う間も何度もタオルを取ろうとするし、あの手この手でブロックする。なんとか洗えても泡を流すときにシャワーのホースを彼に握られたりと気が抜けません。今回は彼にホースを握られた上、振りまわされたので頭からずぶ濡れになりました。
『おぉ水も滴るなんとかじゃん?』
濡れネズミの私を見て、洗い場の職員が大笑い。
『河童ってホントはいいたいんじゃろ』
私が返すと相棒が
『よう分っとるわ』
とツッコミ。一触即発の空気も笑いに変えるメンツに助けられてます。
なんとか洗い終り、最終ミッション。
着衣介助へとステージは進みます。
オムツ台にのせ、オムツをつけるのですが下半身を両手で隠したり、足でブロックしたりが再び。あっちを向いたりこっちを向いたり、起き上がろうとしたり。
オムツ台は高いし、囲いもなく、1人で彼の相手は大変危険です。
なので頭側から彼の両手を押さえつつ、身体を動かないように固定しつつオムツをスムーズに着けやすくサポートする人とオムツをつける人が必要となります。
ズボンを履かせて車椅子へ。コレで入浴のミッションオールクリアとなります。
彼が車椅子に乗った時点で何故か洗い場職員が総出で謎のハイタッチ!
『お疲れ!』パン!
『よ、お疲れ!』パン!
不思議なハイテンションですね。
ずぶ濡れとはなりましたが、ミッションクリアとなりましたのでこれにて終了。
次回をお楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます