星見の里に到着

 星見の里へやってきた二人。

 あまり都市部では見慣れない光景に目を奪われた。

 彼らの家の外壁はレンガや木材で作られたものではなく、布や革で作られていたのだ。

 大型のテントと言ってもいいだろう。

 赤、青、黄などのカラフルな彩色が施されている。

 それらが不規則に数十も並び、星見の里として成り立っているのだ。


「す、すごい……けど、部外者が入って平気なのかな……?」

「平気ですよ。彼らは外部の者を客として持てなしてくれます」


 星見の里は占いの民であると同時に、遊牧民としての側面も持っているので、外からもたらされる恩恵はありがたいのだ。

 星見も元々は数百年前に、外貨を得るために行ったものと言われている。


「そうなのか……あとは今更なんだけど、私様が一緒だと変な目で見られないか?」

「変な目?」

「いや、だって喋る仔馬だぜ……?」

「ああ、それなら――」


 里の者や、外からやってきていた行商人などがチラチラとメラニを見ていた。

 中にはブツブツ言いながら拝んでいる者さえいる。

 その言葉をよく聞いてみると『ありがたや……ありがたや……神獣ユニコーン様……』と言っていた。


「……神獣ユニコーン?」

「喋る馬というの自体は、こちらの地方では有名なのですよ。ただし、角があるかないかで大きく異なるのですが、あまり気にしない方が多いようですね」

「角か~……角さえあれば私様も神獣扱いか~……」

「アハハ、僕としては発見されているユニコーンより、調べがいのあるメラニさんの方が好きですよ」

「う、嬉しくない……」

「まぁ、角が折れたユニコーンとでも言い訳すれば問題ないということです」


 メラニは思い出していた。

 里に入る前、フェアトがはちまきを巻いてくれていたのだ。

 何かのオシャレなプレゼントかと思ってワクワクしていた心を返して欲しい。


「さてと、ここに来た目的である星見を試してみましょうか」

「試すって、星見の知り合いでもいて頼む事ができるとか?」

「いいえ、星見目当てでやってくる外部の人間が多いので、簡易的に星見をしてくれるお店がいくつもあるんです。ほら、あそことか」


 星見の里の中でも、極めて華やかな彩りの家があった。

 看板には『星を見る者スターゲイジー本家』と書かれていた。

 行列ができていて、如何にも繁盛していそうだ。


「おー、あれだけ待ってる人がいるっていうのなら有名な星見なんだろうぜ」

「ええ。スターゲイジーといえば、星見の秘伝を握るという一族ですね。貴族だけでなく、一国の王ですら行く末を占うために頭を垂れるということです」

「じゃあ、早速あそこに行こうぜ!」


 メラニのその言葉に、フェアトは首を横に振った。


「んー、予算が厳しそうですね。まずは途中で手に入れた素材などを換金しなければ――」

「シャッチョサン、シャッチョサン! 安くて良いお店あるよー!」

「はい?」


 突然、肩を叩かれたフェアトはゆっくりと振り返った。

 そこには如何にも占い師という感じのローブ姿の人物。

 頭までスッポリと隠れているので詳しくはわからないが、小柄で高めの声なので幼い少年か女性だろう。


「あ……すみません。調子に乗りました。死んで詫びます」


 目が合った瞬間、占い師は後ずさって小さくなった。


「きゅ、急にどうしましたか?」

「いえ……頑張ってテンション上げて呼び込みをしてみたものの、やっぱりあたしみたいなゴミカスは人様に声をかけてはいけないんだな~って……へへ……」

「やべぇ、超卑屈だぜ……コイツ……」


 思わずメラニもドン引きである。

 それを見た占い師は飛び上がった。


「ぎへぇー!? う、馬が喋っ――いえ、これは神獣ユニコーン様!? うわあああああ申し訳ありません。処女の血を捧げて出血死しますのでお許しを!!」

「くっそいらねぇ……」


 血の風呂ブラッドバスでもさせようというのだろうか。

 本物のユニコーンがいたとしても、遠慮する自体だろう。


「ど、どうお詫びをすれば……」

「ええと、話を遮るようですみません。もとい話を戻すようですみません、ですかね? 僕たちは換金前で手持ちが少ないのですが、そちらで占いを頼めるのでしょうか?」

「あ、ああ、うん。じゃなくて、はい! こちらのテントへどうぞ!」


 パァッと笑顔を見せた占い師は、早歩きで行ってしまった。

 小声でメラニが話しかけてくる。


「なぁ、先生。あの占い師で大丈夫なのか……?」

「んー、悪い子ではなさそうなので大丈夫ですよ、きっと。僕の勘がそう告げています」


 不安がるメラニを余所に、占い師のテントへと到着した。

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