第132話 ナニワ万博の前日、よしひろとみつなり

ナニワ万博のしまづパピリオン建設はよしひろの賢明な努力にもかかわらず進捗が滞っていました。

やはり、しまづの社内に余力となるお金が足りない事と、社内が分裂していたのがここにきて明らかになりました。


よしひろはみつなりにしまづの状況とパピリオン建設が期日に間に合わないことを正直に、そして申し訳なさそうに話しました。

みつなりはこれまでもよしひろがよく相談し、賢明に努力していることを知っていたので、もはや咎める言葉は発しませんでした。


そこで、みつなりは関係する部署それぞれに情報を流し、なんとかしまづが咎めを受けないようにしました。

まず、サンサン商事には、しまづは貧乏な上にナニワから遠いために期日に間に合わないという報告があったこと。


それでも、よしひろは万博開催中はパピリオンに付きっ切りでイベントを盛り上げるという腹積もりであることを伝えました。

この報告は役員会で行われ、ひでよしはやや機嫌を損ねたものの、万博前の大事な時期なのでお咎めはありませんでした。


一方、役員の中でもみつなりを嫌う武闘派幹部たちは別の感想を持っていました。

まさのり、ただおき、きよまさ、ながまさなどは、みつなりが田舎者のしまづをいじめていたのではないかという感想を持っていました。


それは普段律儀にみつなりの指示を仰ぐよしひろに対する好感や同情と共にみつなりに対する嫌悪感が高まることとなりました。


ココでも、みつなりは損な役を引き受けることになります。

彼は、そうした邪推のような同僚の感情に対して、鈍感であり、冷徹でもありました。


しかし、日頃の対立とも相まって、後にみつなりと武闘派役員との対立は大舞台で爆発することになります。

みつなりはひでよしの機嫌を損ねないようにしまづの不手際を加減しながら指摘しつつ、最後によしひろの言葉と断ったうえでこう述べます。


「しまづはトライアスロンで必ずナニワ万博を盛り上げ、今までの遅れを取り戻して見せます!」

とのことです。


それを聞いたひでよしは興味を持ったのか、さっきまでの不機嫌な様子と違い身を乗り出して「それは楽しみにしよう!」と機嫌を取り戻しました。


隣にいたひでながはその様子を見ながら目を光らせていました。

なにか企んでいるようですが、それはトライアスロンの時に判明するでしょう。


※福島正則と加藤清正が武闘派で石田三成嫌いなのは有名な話ですが、面白いことに対島津に対する接し方は異なっていました。


清正は島津と領地が近いせいもあって争うことも多々ありましたが、正則は島津義弘を武将としてとても好いていたため、関ヶ原後、家康に対して島津に寛大な処置をするよう強く働きかけたそうです。


恐らく損得勘定抜きで動いてくれたみたいなので、島津側から見ると敵側になりましたが恩人の一人と言えるかもしれません。

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