第24話 社長よしひさの一日

株式会社しまづの社長よしひさはしまづ4兄弟の長男です。

弟によしひろ、としひさ、いえひさがいます。

彼の弟たちは皆元気で活発です。


しかしよしひさだけは昔から体が弱く病弱気味でした。

それを見たしまづの社員たちはよしひさが跡取りになるのは難しいのでは、と密かにささやいていました。


そんな日を送るうちに、よしひさは心が内向きになり、自信を失っていきます。

しまづの跡継ぎになることもないとあきらめかけたことも一度や2度ではありませんでした。


しかし、よしひさが会社の跡取りにならないという噂が広がったころ、当時の会長である祖父が、よしひさは弟たちを束ねる総大将の器であるぞ!と社内で断言したことにより、よしひさは奮起することになります。


彼の祖父も父である社長もよしひさの能力を高く買っていたのです。

一時期は自信をうしなったよしひさですが、その内向きのエネルギーを今度は自省することに費やします。


彼は歴史を良く学び、祖父や父の教えを良く守りました。

そして歴史上失敗した人物について良く学び、自分はそうならないようにしようと誓いを立てつつ、その決意を忘れないために歴史上やらかした人物の肖像画を自分の目の届く所に置く習慣を身につけました。


社長になった彼は、基本的には部下の判断を最大限尊重し、あくまでハンコを押すことと、失敗した時の修正と責任を取ることを意識した経営をしました。


どうしても部下の意見と合わない時でも、頭ごなしに否定するのではなく、占いで悪い目が出ているので考え直してみてはといった気を使ったテクニックでしまづをまとめていきました。


その結果、弟たちや部下たちから信用され、彼らはよしひさに隠し事なくあらゆることを報告するようになりました。

それ自体はとても良いことだったのですが、責任感が強く、体の弱いよしひさは特にお腹の調子が悪いことが多く、いつも胃薬を用意する体になってしまいました。


よしひさ自身は指導力も考える力も優れていましたが、どこか決断力に欠ける所もあり、それを補うかのように占いや神仏に頼る、そんなリーダーでした。

また、胃が弱く、そのためお酒も苦手だったため、彼の忠実な部下たちが社長の代わりにお酒を飲んだり、宴会に参加することもあり、ある意味でバランスの取れた関係でした。


しまづを全体で見ると宴会好きの脳筋集団だっただけによしひさはとても貴重な社長であり、総大将だと言えるかもしれませんね。


※島津義久は特に晩年、いろいろ悩みがあったせいか、体の調子が悪いと言って上洛を拒否することが多くありました。


彼自身は当主という地位に固執していたわけではなかったようですが、一方で弟たちにまかせるとあらぬ所に島津が行くという危惧を感じることが多かったせいか自分の持つ権限を離さないことも多く、複雑な彼の心境を物語るものとなっています。


近衛家と親しい関係から、和歌などをたしなみ、しかも大好きだったようで沢山の歌を詠んでいたようです。

戦については明らかに弟たちや家臣たちと比べると消極的な立場が多かったですが、いざという時には出陣して総大将としての役割もキチンと果たしていたようです。

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