銀の風

ひだ のぶこ

第1話

3月の嵐




雨風が 強烈に 吹き荒れ


雷が 鳴り響き


その海岸の 波は高い




しらじらと 朝を迎えた時 ほんの少し雨風が止んだ。




その時を みはからったように砂浜に 近い家から 男が出て来た


砂を 踏む力強さに その男の 騎士のような,たくましさが表れていた。




そして 背中に 2歳頃の眠る子供が 結ばれていた




自分の船が 流されていないか しっかり繋がれているのを 確認した。


また 砂浜の砂が 体に体に当たり 引き返そうとした時


近くの 岩の影に 


白い布が流れているのが 目に入った。




その次に 白い肌 ふくらはぎの足から 海水に血が流れていた




この嵐で 船が転覆して この砂浜まで流されてきた、気を失った 女人




そして その女の胸にも 赤子が  


決して離れないような 縛り方で


子供を 守る 意思が 強く感じられる。




自分と 同じ 境遇を想像させた


助ければ 「厄介だ、、」


男の声が出た。




今 人を 助ける力が 自分にあるか悩む


赤子を 胸に縛り付けて 


この嵐の中 どうして ここに流れ着いたのか




自分と同じように 


女戦士のような 女とその赤子


普通でない




助けるべきでは ない 


ほっておけば 知らないふりを すればいい




自分以外に 助けたいと思う人が 次に来ればいい。




今の この息の弱さから 自分が助けようとしても 無理かもしれない 


捨てておけばいい


そう判断し


立ち上がった時




背中に 背負った子供の 目が覚め


男の肩を ぎゅっと 力を込めた




男は顔を 二度三度ふり 諦めて


その場を離れた。




立ち上がると 砂浜の砂が また体に 当たり痛かった




そして また 雨が 容赦なく 


強く 降り出した。




背中の子供が 力を込め 抵抗をした


そんな幼子の 抵抗は 初めてだった


わずか1才8ヶ月の 幼子の 初めての その男への反抗。

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