第4話 トリプルワーク

「濁流に飲み込まれちゃったのかと思った」


「飲み込まれた。人生という濁流に飲み込まれた」


「ふふふ」


「毎日毎日、濁流に飲み込まれてる」


「疲れてる」


「オレの事はいいけど、お仕事はどうなのって」


「お仕事やってるよ」


「やってるのはわかってるよ。結局、子供なんともなかったんだろ?」


「なんともなかった」


「よかった」


「よかった、よかった。ま、なんともないと思ってたんだけど」


「うん、いや。だって心臓に雑音があるって、だいたい先天的なのものだから最初からあると思うんだよな」


「それも言ったの。今まで検診、3歳児検診とか、赤ちゃんの検診から1回も言われたことないって言ったんだけど、やっぱりちょっと大きい病院に行って来てって言われて・・・紹介状書くからって」


「うん」


「で、行って、ぜーーーんぶ検査して」


「ま、そりゃそうだ。で、何もなかったんだろ?」


「何もなかった」


「ん、よかったよかった」


「うん。よかった。でもね、こう言っちゃあれだけど、おにいちゃんの気持ちわかった」


「何が?」


「いや、やっぱりね、なんだろ。うん、疲れちゃうと思う。すごく」


「なんだよ急に」


「私もだけど、こないだ病院に行ったり、トリプルワークしてるじゃん。なんかさ、相当疲れるよねw私ですごい疲れるからw」




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