ナイトゼロ

高見南純平

第1話 

 時代は、二千十二年。


 モンスターが、大昔に現れたことで、武士がモンスターを倒す魔騎士になっている。

 舞台は、日本の東京。

 モンスターが現れても、行きつく場所は同じ。場所などが変わっていても、大まかなことは変わっていないことが多かった。

 そんな時代に、一人の孤独な戦士がいた。


        *


 今日は、一日中東京は雨と言う天気予報だったが、一日中雨が当たらない場所にいるつもりの、この二十歳の青年には関係なかった。


 青年がいる場所は、今日、十一月二十四日に行われるコスモバトルの会場の、東京アームド街にある世界で一番小さいドーム、バトルアリーナの会場と選出の控室や、関係者意外立ち入り禁止の場所をつなぐ、横にちょうど三人入れるほどの幅で百メートルほどの長さの、通路と言うか廊下の白いソファーに座っていた。


 青年の格好は、頭以外赤い色に包まれた見た目は薄いが、すごく分厚くて防御力が世界の中でも有数の防具 グラマラムを着用していた。


 兜と思われる武具は、ソファーの上で、青年の横にポツンと置いてあった。


 このグラマラムの兜もそうだが、グラマラムは赤と言うより血の真赤で不気味な色だった。


 このことから彼の二つ名は、いや、三つ名は「血だらけの戦士」と呼ばれている。と言っても、この青年はそんな怖くはない。確かに、実力はあって、モンスターを狩る魔騎士の中でも上位だが、やさしい性格だ。少し、言葉使いは悪いが。


 彼の魔騎士のコードネームは、レッド。鎧が赤いからレッドと言うコードネームになったわけではない。確かに、魔騎士のコードネームは、その魔騎士の性格や姿によって決められることもある。だが、彼の場合は違った。コードネームの由来は、彼の能力に秘密がある。


 「それでは、第一回コスモバトル、予選Aブロック第一試合のカードは、優柔な血だらけの戦士 レッド~」


 大会のMCが、声がはち切れるんじゃないかと心配してしまう大声で、マイクを通して叫んだ。マイクがなくても、この小さい会場なら聞こえるのだが。


 「レッド~」 


 「わああああ」


 そんな歓声が、会場の満員客席から聞こえた。レッドは、魔騎士人気度ナンバーワンと言っても、大げさではないほど人気だった。


 「よし、行くか」


 頬を、気合いを入れるために赤くなるほど二回両手で両頬をたたくと、隣にある兜を手に取り、少し長い髪を兜にしまいながら、グラマラムの兜を装着した。


 そして、ソファーから重い鎧を起き上がらせ立ち上がり、歓声があふれている会場の中の闘技場へ足を踏み入れた。


 「わああああ」


 歓声が、レッドの鎧に包まれた足が闘技場に足を踏み入れた瞬間、爆発的に大きくなった。三百人しか入れないこのバトルドームだが、ドーム全体に聞こえるほどの歓声だった。まあ、狭いからかもしれないが。


 「次は、限界を知らないスピードの、コードネーム アクセル!」


 闘技場に入ると、余計耳が痛くなるほどうるさく聞こえる、MCの叫び声。本人的には、迷惑にならないように控え目にやっているのだが。


 アクセルが闘技場に姿を現すと、レッドの歓声だったのがアクセルの歓声に、変わり身の術かのように変わった。


 アクセルの格好は、レッド動揺兜も着用したので、控え目な赤色の鎧で、伝説と呼ばれるバイソン バギルの鱗や皮を使った、厚めの鎧 ハ―キーを着ていた。背中には、おさめられているこれも、バギルの素材を使った大剣 ハグレットが存在していた。ハグレットは、主のアクセルよりも長い大剣だ。これを扱うには、相当な筋力と体力が必ず必要だ。アクセルは、魔騎士なのである程度の戦闘能力は持っているが、ハグレットを扱へはしない。だが、防具のハ―キーがそれをカバーしてくれるので、何の問題もなかった。


 「レッド。俺の限界を知るために、倒させてもらう。だが、いい勝負にしよう。よろしくな」


 そう言って、離れているレッドに向かってアクセルは、右手を差し伸べる。


 「ふん。相手に、握手を求めてるから、俺の方が強いんだ」


 少し挑発気味に言ったレッドは、腰の鞘から一メートルほどの、これも赤い剣 アグルを抜き構えた。


 アグルは、刃以外は普通の剣だが、刃の先が途中で三つに分かれ、剣の先で絡み合うようにねじれている。


 「勝負は、礼に始まり礼に終わる」


 律儀なアクセルは、レッドが握手をしようとしないので、手を下げた。


 「どうかな?今回のバトルは、最後には礼はできねえぜ。おい、MC。早く始めろ」


 睨むようにMCを、つめたい眼差しで見つめたレッド。それに対してMCは、怯えたようにして、「はい」と返事をした。


 「それでは、バトルスタート」


 MCが主ぶか医師の挨拶をした途端、愛剣のアグルを構えているレッドは、即座に大剣のハグレットを構えてない、無防備なアクセルにうるさいほどの歓声の中、全力で走って行った。

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