41 翻案いろいろ。岡本綺堂『玉藻の前』②
さてさて、『クラリモンド』は短編なのですが、実は綺堂の『玉藻の前』、長編です! すごいな。
筋書きは『クラリモンド』なのですが、玉藻の前なのでお話の背景は殺生石の伝説、時代は仁平二年あたり。雅な貴族文化の雰囲気に、陰陽師も登場するダークな伝奇ロマンになっています。
こちらで玉藻の前に魅いられるのは千枝太郎、幼いころの名は千枝松です。
千枝松は幼なじみ
あくる日から千枝松は熱を出して寝込み、その間、別人のように艶やかになった藻は宮廷に召され、やがて玉藻の前と呼ばれ権勢を振るうようになるのでした。
藻を失い生きがいを失った千枝松は、陰陽師の
ところで『死霊の恋』または『クラリモンド』、キリスト教文化圏外の読者にはいまひとつクラリモンドが誘惑してくる酒池肉林を忌避する感覚がわからないところがあります。おぞましく忌々しいものなんでしょうけど、そんなに悪いですか? そう思ってしまう。
彼女の優しさもどこまで娼婦の手管かわからないけど、そこまで邪悪なの?
多分綺堂はそのへん考えて「殺生石」伝説を投入したのかもしれませんね。平気で人をおもちゃのようにバラバラにして殺す玉藻の前が、あらゆる狡猾な手口で寵愛と地位を築いてゆくのがほんとに怖い。
千枝太郎は自分を捨てた藻への想いに引きずられ、陰陽師でありながらおぞましく残酷で美しい玉藻の前に魅入られてついに殺生石の前で姿を消します。
いやぁ、ほんとに怖いなあ。
翻案、面白いですね。
『死霊の恋』または『クラリモンド』と『玉藻の前』でした!
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