閑話 キサラの生涯

 私はキサラ・レイン。ファンタジー世界に転生した元人間のハイエルフだ。魔法とかファンタジーな種族がいっぱいいる世界に転生した。



 双子の女神様二柱に転生しないか聞かれてからもう400年位経つのかぁ。自分が死んだって聞いたときは驚いたし、信じられなかったけどいきなり非現実な存在が目の前に2人もいたら慌てるどころか逆に冷静になったんだよね。それですんなり転生しちゃった。思えばいい加減な女神様方だったなぁ。何度も会ってるけどいい加減なのは変わらない。でも転生した私のこととか、次に転生してくる子には気使ってるんだよねぇ。なんだかんだ良い女神様方だ。


 転生したあとはハイエルフっていう長命種に転生したから寿命が長い長い。人間の感覚じゃ生きていけないねぇ~。幸い転生したら人間の感覚がなくなってハイエルフの感覚になってくれたみたいでよかった。


 思い返せば、400年もあるといろいろあるもんだ。





 転生したばかりのときは自分が貴族の令嬢で驚いたな。でも明らかに自分が両親の子供じゃないって察したときはどう対処したら良いかわからなかった。私は銀髪金目なのに両親は薄い青髪で目も青だもん。私絶対どこかで拾ってきた子だよ。でも育ててくれるならいいやってそのまま育ったんだっけか。銀髪金目がハイエルフの特徴だって知ったのは大分後だったな。


 料理が不味すぎて自分で作るって言っても作らせてもらえないから暴れたら作らせてもらえた。前世三ツ星の料理長は伊達じゃないぞ。


 淑女のたしなみとかって変な教育されそうになったけどそれも暴れて騎士の訓練や魔法の練習をさせてもらった。そうやって過ごして大人になったら親が決めたっていう婚約者の王族の男が来て何だかんだ言われてムカついたから家出した。そして二度と帰らなかった。婚約者っていう王族の男はクズだったからいいよね。育ててくれた両親には悪いと思うけど何も言わずに決めるのが悪いよ。とりあえずお隣の国に行くことにした。






 家出しても腕っ節で何とでもなった。家出した時点でも私の強さは国の騎士団長を余裕で倒せるくらいだったからな。それに冒険者っていうファンタジー定番の職業があったからだ。依頼を受けて達成したら酒を飲みに行く! 最高じゃないか! あのときは楽しかったなぁ。ただ碌な男はいなかった。私の自慢のおっぱいしか見ないやつばっかりだ。このころから私には男運はないんだなって思い始めた。


 でも女運はあった! 超美人エルフの姉ちゃんをパーティメンバーに捕まえたのだ! 私も体には自信があるが私よりもおっぱいがでかい! 最高のおっぱいだ! おっぱいエルフだ! 毎日このおっぱいを揉みしだいて埋もれて寝るんだ。絶対に離さない。まったくエロフは最高だぜ! 何か変な性格してるけどまあいいや。


 2人で楽しい冒険者生活を送っていても無粋な輩は現れる。家出した実家の者たちとあの婚約者とかいう男が追って来た。ムカついたから男をボコボコにしてから2人一緒に船で大陸を渡った。いやーインターネットなんていう便利なものがなくてよかった。そんなものがあったら船で待ち伏せされて大陸出られなかったな。その時は追手をボコボコにしただろうけどな!




 渡った大陸で心機一転。何をしようかと2人で話し合ったけど結局冒険者に落ち着いた。冒険者飽きたら何かいろいろやろっと。冒険者をやりながら旅をした。2人で旅してるうちに1人ロリっ娘エルフがパーティに増えた。ロリっ娘エルフもおっぱいエルフも私が編み出した修行法で鍛えてるから強い。私も強い。おっぱいも強い。つまり私たちのパーティは最強だった。たくさん依頼をこなした。ダンジョンも踏破した。


 いつの間にかこの国で一番有名な冒険者パーティになっていた。そのせいか変なのがいっぱい寄ってきた。妾にとか、妻にとか、愛人にとかってさ。何で股間ばっかり関係するの? それにちょっと鏡見てから言って欲しいものだ。あ、鏡は高級品だったな。とにかくムカついた。特にうちのロリっ娘エルフをずっと子供扱いするのが一番ムカついた。私より歳上だぞ。何より嫌がる仲間をバカにするのも許せなかった。

 だが私も大人になったからムカついたからってすぐに殴ったりはせずに大人の対応をしていたけど、下手に出てたらおとなしいと思われたのか貴族とかが横暴な態度を取ってきたし、また王族が出てきた。妾に召し上げるとか命令してきた。ムカついたから顔面をグーパンしておいた。それでも腹の虫が収まらなかったから依頼とダンジョンの探索で得た腐るほどあるお金を全部使うことにして3人で国中の塩と香辛料を買い占めた。そしてまた国を出た。





 次の国は物凄くでっかい領土を持つ大国だった。この国で私は面白い出会いをする。ん? 男? 違う違う女だよ女。私は女運はあるんだ! え? おっぱいエルフとロリっ娘エルフは面白い出会いじゃなかったのかって? 2人は運命の人さ! 同性愛もありだろ? 面白いとは違うんだ。


 この国では何をしようって3人で話し合った。結局冒険者だった。でも違うのは魔法や魔道具を研究したいとおっぱいエルフが言ったのだ。だから田舎で冒険者しながら研究だ。独学での研究だけど時間はあるから少しずつ学んでいこう。私も作りたい魔法があるから了承した。ロリっ娘エルフは実験台だ。嫌がったが私たち2人のおっぱいの乳圧には勝てなかった。首元を挟まれ幸せそうな顔をしていた。


 私が作った魔法は避妊魔法だ。この世界は避妊具がなかったから魔法ですればいいじゃんと思って冒険者をしながら長年の研究の末に完成した。ワンタッチで解除できるようなすごい魔法だ!

 と思っていた。臨床実験がないのだ。実験しようにもロリっ娘エルフでは男が釣れない。おっぱいエルフは男に興味がない。私は男運が壊滅的にない。募集したらきっと碌なのが来ない。避妊魔法は頓挫した。


 おっぱいエルフは火が出るコンロを作った。これで料理がしやすくなるぞ! でも爆発した。私も改良に加わったらあっさりいいものが出来上がった。おっぱいエルフの嫉妬の目線が気持ち良い。いつもの倍激しく揉んだ。でも結局使い道は私の料理だけだ。おっぱいエルフもロリっ娘エルフも私の料理が美味しくなるならそれでよかったそうだ。


 研究を続けて30年くらい。ロリっ娘エルフが飽き始めた。おっぱいで釣るのも限界らしい。じゃあまたダンジョンでも行こうかって話をしていたら国の面倒臭そうな奴らが来た。騎士団らしい。何か女王が呼んでるらしい。面倒臭いからそっちが来いって言ったら向こうの代表っぽいのがキレた。なんで? 騎士団を語る盗賊かもしれないから信用なんてできないって言ったらさらに怒った。ロリっ娘エルフと首をかしげていたら力づくで連れて行くっていうから2人で騎士団を名乗る盗賊たちを全員ボコボコにしておいた。特に代表は2人で股間攻めしておいた。手加減が大変だった。ロリっ娘エルフはストレス解消になったようだ。


 盗賊団が帰ってから3ヶ月くらい経ってまた団体が来た。今度は盗賊の代表ではなく国の代表だった。つまり女王自らやって来た。そっちが来いとは言ったけど本当に来るとは思わないじゃん? それに騎士団を語る盗賊団だと思ってたから来るとは思わないよ。しかも驚くことに私と同じハイエルフだった。私以外のハイエルフに会うのは初めてだったから親近感が湧いた。しかも巨乳だ。ロリっ娘エルフとおっぱいエルフはメンチきってた。


 このハイエルフ女王が話の分かるやつだった。最初に来た盗賊団騎士団の不始末を自ら頭を下げて謝罪するし、詫びに何か要求はないかとかもう至れり尽くせりだった。研究して作るだけ作って臨床実験をしてない避妊魔法とか私愛用の魔石で動くコンロとかすっごく興味持ってくれて実験も手伝ってくれるそう。3人揃って王都に来ないかって言われたけどさすがに即断はしなかった。1人じゃ決められないし2人と相談したら田舎飽きたし都会行きたいとロリっ娘エルフが言ったので3人で行くことにした。


 道中いろいろ話したけどハイエルフ女王とは気が合った。周りの堅苦しい奴らに嫌気がさしているらしい。だから私たちみたいに気兼ねなく話してくれるのは嬉しいそう。それに同族なんてまったくいないそうだ。昔はいたらしいけど亡くなったとか。国の研究班みたいなところを作ってくれて実験とかいっぱいさせてくれた。避妊魔法もそれで完成したからな。


 私たち3人はちゃんと実験が終わった後に使ったぞ!


 それからも国の城で女王と一緒に4人で好き勝手やらせてもらっているけど無粋なのがいっぱいくる。女の園に土足で入ってきて荒らす男はいっぱいいた。どうして私はこんなに男運がないんだろう。イタズラで謁見中の女王に水ぶっかけたらうるさい男たちに怒られたし、座るときに椅子引いてもうるさい男たちに怒られたし、盗賊団騎士団の団長は何もしてないのに絡んでくるし、女王に夜這いかけた次の日の朝にはなぜか怒られた。私のおっぱいエルフに手を出すバカ野郎もいた。ロリっ娘エルフは手が出されないことに不満を言ってた。


 男運がないことを女王に相談したら何人か紹介してくれて付き合ったけどコレジャナイ感しかなかった。私を触ると壊れるような感じで接してくるんだよなぁ。もっと雑に扱ってくれる男がいい。でも雑すぎてもダメだ。ちゃんと気遣いが出来て雑に扱ってくれる男が私には合ってる。要するに友達みたいな感じで付き合える男が良いなって女王に言ったら無理って言われた。いいさいいさ! 私にはおっぱいエルフとロリっ娘エルフがいるんだもんね!





 国に所属して自由に遊び惚けつつ冒険者やりながら国内を旅していたらとんでもないことが起こった。


 戦争が起きた。


 せっかく3人で楽しく旅してたのになぁ。私たちにもお呼び出しがかかった。女王がかなり深刻に私たちに助けてほしいそうだ。私たちは強いからな! 多分個人の戦闘力じゃ世界で五指には入るだろうな! 戦争なんて私たちで終わらせてやろう。


 と思っていたんだけどなぁ。


 相手が魔族で、向こうに魔王がいて、しかも相手国は海を挟んでいるそうだ。………攻め込めないじゃないか。しばらく私たちやることがないらしく防衛といざという時の戦力としてそばにいて欲しいってことで呼び出されたらしい。さらに面倒なことに海を挟んだ大陸にある国との共同戦線とかの話もあるらしく面倒事がいっぱいだ。私そんなの知らない! え? 私いないと女王寂しいって? 仕方ないなぁ。そばにいてあげよう。4人で一緒のベッドで寝ようね!


 と言ってから何年か経ってしまった。本当に戦争してる? 女王曰くこう着状態らしい。私平和ボケしちゃうよ? ダンジョンに遊びに行っていい? ロリっ娘エルフがうるさいんだよ。何か前線は戦闘になることがあるらしいからもう私たちが行ってくるよ。と言って無理やり前線に来た。


 前線で戦闘になっているところに3人で乱入。私たちを知っている味方がいて良かった。魔族軍の大半をボコボコにしてから拠点らしい所に言ったら盗賊団騎士団の団長がいて叱られた。何でなん? 私たち助けに来たのになぁ。


 魔族軍が私たちの参戦で大敗したからか今度は大軍で攻めてきた。よーしやるぞー!


 あ~………調子に乗ったなぁ……強いのばっかりじゃないか。倒したけどさ。魔族軍今まで絶対手加減してたよ。きっと肝心なところではこの戦力投入したんだろうな。どうりで終らないわけだよ。あらかた倒したから帰って休もう。ちょっと疲れたからなぁ。おっぱいエルフもロリっ娘エルフも疲れてきてるからなぁ。


 と思っていたら魔王登場だよ。空気読んで欲しい。でもやるしかないよね。


 魔王まぢ強い。最初から出てきてたらもう戦争終わってるよ? 出てこればよかったのにね。ちなみに私が勝ったよ。ギッリギリだったけどね。というか引き分けみたいなもんだった。万全の状態なら余裕で勝ってたな!


 別に殺してないし少し話したら世界征服したいんだってさ。バカな男の子の典型だ。征服した後どうするの? 管理大変だよ? 魔王様魔王様っていっぱい言われて仕事に圧殺されるよ? って言ったら凄い落ち込んでた。


 その後なんだかんだで和平が結ばれた。魔王の側近たちにはすっごい感謝された。ブラック企業も真っ青な状態に戦争でさらにブラックな労働環境で前線で指揮して命張るってどんなブラックだよ。それ聞いた魔王めっちゃ落ち込んでた。側近たちに必死に謝ってた。


 一方の私は戦争を終結させた英雄として持てはやされた。毎日のように偉い立場のバカがいっぱい来る。地位と名声と金を手に入れるとこうなるんだな。貴族たちの押し掛けと英雄扱いが嫌になったのかおっぱいエルフは田舎に隠居するそうだ。1人でのんびり研究して過ごすのもいいかもしれないと言って足早に旅立ってしまった。場所は前に私たちが研究に使ってた田舎の方らしい。会いたくなったらいつでも会いに行けるし、私たちの寿命は長いから今生の別れ何てものでもないしな。ロリっ娘エルフも英雄扱いが嫌で旅するそうだ。久しぶりに1人になっちゃったな。女王に良い男いない? って聞いてもいるわけないって言うしなぁ。そうだ。未来の夫探しの旅をしよう! 今まで男運最悪だったからきっとこれから良い出会いがあるに違いない!


 さあ! 私も旅立とう!





 数年後


 全然出会いないんだけど? どういうこと? こんな完璧なボンッキュッボンのぼでいを持ってて大陸で五指に入る美人と言われた顔面があるのに何で性欲の権化みたいなのしか寄ってこないの? もうやけだ! 娼館で働こう。超高級な娼館に行こう。ついでにそこの超高級な娼館にいる娘たちを食いまくろう。魔王に教えてもらった変幻魔法で髪の色変えればハイエルフって見られないだろうからな! そして未来の旦那様を喜ばせる技術を学ぶんだ!


 金持ちの貴族と商人しか来ないんだけど? どういうこと? 少ないお給金で少しずつお金貯めました! っていう感じの美少年が来てもいいんじゃないの? 私戦争終わらせた英雄ぞ? 魔王倒せるの多分私だけだったぞ? そろそろ良い思いしてもいいと思うんだ。気長に美少年待つかぁ。というか私の代金高くない? やたらお金もらえると思ったら一晩で小さい屋敷買えるくらいの代金貰ってるらしい。ふふふ。傾国の美女とは私のことさ!


 暇つぶしに客で派閥の違う貴族の情報を横流ししまくったら片方の派閥が来なくなったのまぢウケる。いつの間にかもう片方の派閥の貴族も来なくなったけどな! 


 飽きてきたなぁ。辞めるかぁ。って伝えたらめっちゃ引き止められた。力づくでも引き止めるっていうけど私相手には無理でしょ。全員デコピンでぶっ飛ばして辞めてきた。






 久しぶりに女王の所に顔を出した。暇なら娘が海を渡った国の王に嫁ぐから変装して護衛してくれないかって? いいよ! 向こうの大陸はまだ旅してないから楽しみだなぁ。戦争の時に共同戦線張ってた国かぁ。未知の場所はワクワクするな!


 大陸が変わっても飯は不味いなぁ。私の料理広めるわけにもいかないんだよねぇ。おっぱいエルフとロリっ娘エルフが一時期私の料理中毒になってたからな。美味すぎる料理を作れるってのも罪なもんだ。そんな私になぜ夫がいないのかわからない。


 王女の嫁ぎ先の国王の元にまで来た。国王への手紙には私のことが書かれていたらしくて国王が頭を下げてきた。なんせ戦争を終わらせた英雄だからな! ちなみに私はこっちの大陸でも有名らしい。女王の国でも本になってたけど、こっちでも私のことは本になってるらしい。変装は必須かぁ。まあいいや。旅だ旅! 


 いろいろ回って魔物被害を助けたりとかして回った。そんな折温泉があると聞いた。女王の国にもあったけどこっちの温泉も楽しみだな! さっそく温泉へ行こう!


 まぢ天国。最高だ。一番お高い宿が領主のやってる宿でそこに泊まったけど快適すぎる。ていうかこの温泉絶対転生者関わってる。だって日本家屋だよ? どう考えても転生者いるじゃん。すき焼きが出てくるなんて思わないでしょ? 超美味しい。幸せ。でもここに居つくと転生者に手伝ってって言われるよねぇ。それに旅の途中だし、一泊で出ることにしよう。一泊でも十分堪能したしね。あと飼われてるデブタヌキ超可愛い。冬毛で超モフモフ。


 旅してたら違う国に来ちゃった。人族が統治してる国で人族がいっぱいいる国に来た。うん。こんな所は二度と来ない。何でそんなに強欲なの? いきなり妻に迎えるなんて初めて言われたよ。妾とか愛人はいっぱいあったけどさ。しかも人族以外は汚らわしい亜人って言ってたのに何で私だけ妻なん? 汚らわしいのを妻に迎えるってどういうこと? 元娼婦だから考え方によっちゃすっごい汚れてるよ? 矛盾してるんだよ。しかもこの国そんな考えのがいっぱいいる。全部貴族みたいだけど前世でも人間は強欲な歴史だった気がするけど、どこでも人間は変わらないんだなぁ。しかも教会っていう宗教もあって私を勝手に聖女扱いしてきたのは腹が立ったから教会本部とやらを真っ二つにしておいた。


この国にいても良いことはなさそうだから他の国に行こうっと。






 それから旅を続けて20年くらい。どこ行っても私は有名みたいだ。生きにくい世界になっちゃったな。私も隠居しよっと。ひっそり山の中でスローライフで余生を過ごそうかな。おっぱいエルフとロリっ娘エルフは元気かなぁ。何してるかなぁ。おっぱいエルフは会いに行ったけど自然災害で前にいた場所は広範囲で土砂に埋もれていた。避難してるだろうけど、どこにいけば会えるのかわからないな。女王に聞けばわかるかと思って会いに行って女王に調べてもらったけどわからないそうだ。女王の元にいても未だに英雄扱いしてくるから煩わしい。どこか静かに隠居できる場所を探そう。






 そして今の山の中に落ち着いたんだったなぁ。ロリっ娘エルフにも会えなかった。諦めて静かにここで余生を過ごそう。何でも手に入る地位や名声もあったけど、出来れば夫が欲しかったなぁ。ごく普通の幸せな家庭ってのに憧れなかったわけでもないんだ。もう無理かな。諦めよう。

 それよりも今は目の前のお肉だ。そろそろかな~? うん。良い焼き加減で美味しそうだ。いただきま~す。


 美味しくお肉を味わってたら私を転生させた双子の女神様が現れた。何回も会ってるけど、いつも何の前触れもなく現れるのやめてくれないかな? 心臓止まりそうだよ。私のお肉つまみ食いしないでくれないかなぁ。


 そんで何しに来たのか情報を何とか引き出すと、私の次の転生者の面倒をみて欲しいそう。面倒くさいけどいいか。久しぶりに一仕事だ! とことん鍛えよう。場所もどんな特徴の子かも聞いた。転生者の記憶は10年以内には戻るからそれまでにダイエットだな!





 ダイエットに成功した私! かつての美貌を取り戻した! 10年くらい経ってるけどな!


 さて、まずはその子を探さないとな。探して………どうしよう? あの村の位置からして孤児で1人ってのは考えにくいんだよなぁ。女神様からの指示にして拉致するか! それがいいけど、出来れば穏便に連れて行きたいね。


 黒髪は珍しいからあっさり見つかった。ヤバイ! さすがエルフ! 目つき悪いけど美少年だ! 私にも春が来たんだ! グヘヘヘ!

 話すとむしろ鍛えて欲しいらしい。男の子だなぁ。冒険者はロマンあるもんな!


 さてさて、美少年エルフと同棲が始まったぞ! 犯罪臭がすごいな! でも真面目に鍛えるんだ! とりあえず走らせよう。私の編み出した修行法なら確実に強くなれる!


 う~ん………最初は素直で敬語で話す可愛らしい性格の子だったのにヤンキーみたいになっちゃったなぁ。何でだ? 毎日歩けなくなるまで走らせた後に、腕が動かなくなるまで素振りさせたからかなぁ? それとも走ってる時に強い魔物が追ってきてギッリギリまで助けないからかなぁ? それとも魔法を酷使させすぎているからかなぁ? 飴と鞭はしっかりしてるのになぁ。美味しいご飯に暖かい寝床にお風呂。洗濯も私がしてるし、たまにおっぱい押し付けたりしてるのになぁ。まあいいか! ヤンキーみたいになってもこれはこれで楽しいし、ここまで私を雑に扱った男は初めてで新鮮だ! だけどババアって呼ぶのは許さん!


 う~ん。失敗した。初陣でゴブリンの集落を1人で潰させるのは無理だったかぁ。無理矢理戦わせたけど最終的に怖くて泣いちゃったしなぁ。反省しないとなぁ。慰めて立ち直ってもらわないとな。


 彼と修行のために同棲して4年くらいが経った時に気づいた。彼といるのは心地良い。同じ転生者だからかな? 遠慮しなくてもいい。隠し事をしなくてもいい。いつしか私は彼を好きになっていた。まだ小さいから彼が大きくなった時が楽しみだ。どんないい男になるのかな? 将来2人で旅をするのはきっと楽しい。連れ回して観光したいな。彼が私より背が高くなったらと思うとちょっと気恥ずかしい。お姫様抱っことかされてみたい。彼もきっと私のことが好きだ。甘えてくるし、チラチラ私を見てる。彼と家庭を気づく未来が楽しみだ。





 だけど、それは叶わない。叶わないんだ。私はもう………長く生きられない。自分の死期を悟ってしまった。やっと運命の人に出会えたのに………ハイエルフはもっと長く生きられるはずなんだけどな……昔たくさん無理して体に負担かけたのがいけなかったのかなぁ。


 生きていられるのはあと1年くらいかなぁ。ちゃんと彼にも伝えないといけない。そう思ってから数日経ったけど、私は言えないでいる。言うのが怖い。彼が悲しむかもしれない。彼が落ち込むかもしれない。まだ若いから精神面にどう影響するかわからない。だけど、この1年の間にちゃんと伝えないといけない。そう思いながら数ヶ月が過ぎた。


 彼の修行を終えて、彼が作る夕食を食べて、お風呂に入って寝る。それが1日の流れだ。何度も何度も伝えようとするけど勇気が出ない。伝えないといけないのに………


 伝えようと思って彼の部屋をノックしても返事はなかった。中に入ると彼はもう寝ていた。修行で疲れてるもんな。いつも早寝だもんな。


 彼が寝ているベッドの横の椅子に座り、彼の頭をそっと撫でる。もっと彼と長く一緒に居たい。だけど叶わない。ならせめて彼のためになるようにしよう。私が彼の足枷にならないように。明日こそ伝えて、私という師匠から卒業してもらおう。死に行く私に付き合う必要はない。そのほうがきっと彼のためになるから………


 そっと立ち上がり、部屋を出る。






「ああ……………死にたくないなぁ………」

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