89話 仲間になりたそうにこちらを見ている
「お待たせしました。こちらの5名が当商館からお客様に勧める者達です」
商会長が5人の獣人の女性を連れて戻ってきた。ソファーとテーブルの横に5人が並ぶ。
「こちらが5名の資料です。まずはご確認ください。右端の者から順番になっております」
「はいよー」
資料は名前、種族、年齢、備考の4つか。魔法適正くらい書いてもらいたいんだがね。上から順番に見ていくか。値段は書いてないんだな。見渡すと全員160センチ前後で簡単な白い服と白いスカートを履いている。全員俺よりデカイじゃねーか。さてさて一人目はと…
名前:マルケ
種族:狼人族
年齢:28
備考:元Dランク冒険者 斥候役 非処女 性交渉不可 依頼失敗による違約金を支払えず奴隷落ち
この『非処女』っているか? 性交渉不可ならいらんだろ。ていうか女性奴隷だからこれ書いてあるんだろうな。ちらっと目線を向けるとやたら期待したような目で見てきてる。短い赤色の髪でボーイッシュな感じの獣人だ。やたらと期待したような目で見てくるけどショタコンか?
まあ次。
名前:トルティ
種族:狼人族
年齢:22
備考:元Eランク冒険者 処女 性交渉不可 借金が原因で奴隷落ち
だから『処女』いらんだろ。性交渉不可ならどっちでもいいじゃん。肩くらいまである赤色の髪をいじりながらこちらを見ている。どうにもやる気が無さげだ。
名前:ビーチェ・ベイル
種族:狐人族
年齢:24
備考:元Dランク冒険者 非処女 性交渉可 借金が原因で奴隷落ち
性交渉可なら書いておいていいと思うんだよなぁ。狐人族かぁ。姓がベルベットじゃなくてよかったぜ。さすがにあそこの奴は奴隷落ちなんてせんだろうな。サティと同じく肩より少し長いくらいの明るめの茶色の髪でこちらも何やら期待に満ちたような目をしている。
次。
名前:レイ
種族:兎人族
年齢:18
備考:元農民 処女 性交渉可 親の借金が原因で自ら奴隷落ち 特殊奴隷
おや、ここに来て毛色の違うのがきたな。元冒険者じゃないってことは狩りとかもしてたのかな。種族は兎人族。見たまんまだな。頭に兎耳がある。街でもそんなに多くはないがたまに見かける種族だ。腰まである白に近い赤みがかったストレートヘアーをしており前髪はパッツンで赤い目が特徴的だ。真顔でこちらを見ている。
次。
名前:カリーナ
種族:狼人族
年齢:20
備考:元Eランク冒険者 処女 性交渉可 借金が原因で奴隷落ち
元冒険者に戻ったな。腰くらいまであるウェーブがかかったオレンジ色の髪をして期待に満ちた目でこちらを見ている。
これで全員だが…ショタコンばっかりなの? 仲間になりたそうにこちらを見ているって感じなの? それとも俺がチョロそうに見えるの?
「一通り読んだけど、まあこれじゃわからんわな」
「ははは。それは簡単な概要ですからな。ここからは本人との相談になります。わからないことや補足することがあれば私がその都度追加させていただきます」
「全員俺がどういう奴隷を求めてるかは伝えてあるのか?」
「ええ。冒険者活動で前衛を出来る者を求めていると説明してあります。何でもお聞きください」
「そうだなぁ。順番に使う武器とか戦い方を教えて欲しい。簡単にでいい」
こちらとしては武器や防具も揃えないといけないからそのあたりも把握しておいたほうがいいだろう。連携は練習するしかないからな。
「では、そちらから順に答えなさい」
「はい。私は斥候役で偵察などを主にしてました。武器はナイフ2本です。武器は安上がりなのでお買い得です!」
う~む。どう思ってるのかわからんが何かアピールしてきたな。斥候やってたってのはいいなぁ。どのくらいの腕かはわからんけど俺が求めてる人材でもあるんだよなぁ。索敵がどうにも上手くいってないからな。Dランクでそこそこ経験もあるだろうしなぁ。とりあえずキープ。
「では次」
「私は武器は剣で戦ってた…ました。あと盾も持って壁役もちょっとしてた。ました」
う~ん。ちょっと求めてるタイプと違うなぁ。さっきの斥候役みたいな速さを生かすようなタイプがいいんだよなぁ。この子はいいかな。
「次」
「あたしはショートソードだったよ。速さを生かす感じかなぁ。戦闘よりもベッドの上での戦闘のほうが得意だから、気持ちよくしてあげるよ坊や」
速さを生かすのはいいんだけどビッチはいらんなぁ。なんか病気持ってそうだし。奴隷になった理由も借金らしいし。ないな。
「次」
「待った。君は他にも聞きたいことがあるから最後でいい」
次は兎人族の子なのだが、兎人族がどんな種族なのかまったくわからんし、特殊奴隷ってのも気になる。長くなりそうだから最後にしてもらう。
「では、飛ばしてですな」
「私はナイフ2本でした。合わせて武器を変えることもできますが主にナイフを使ってました。何でもやれます!」
ティルとヒルダといい最初のやつといい獣人の女ってのは軽い武器を好むのかね。
「じゃあ最後に飛ばした君」
「私は武器や罠などを使って狩りをしていました。護身用でしたが使っていた武器は戦鎚と槍です」
「戦鎚とはまた変わった武器を使ってたんだな。聞きたいのは二つあってな。俺は兎人族がどんな種族かわからん。獣人は鼻や耳が聞くっていう程度しか知らなくてな。他の4人の種族は知り合いにいるからなんとくわかるんだがな。といってもだいたい予想はつくが」
「親方様。私がお答えしても?」
商会長に確認を取っている。おそらく勝手に喋ったりしてはいけないんだろうな。
「構わんよ。お答えして差し上げなさい」
「はい。簡単に言いますと兎人族は特に耳がいい種族です。その分嗅覚はここにいる皆さんよりは劣ります。後は同じじゃないでしょうか」
「頭についてるでっかい耳で感知するって感じなのか。それで特殊奴隷ってあるんだがこれは商会長に聞いたほうがいいか?」
「お答えさせていただきます。滅多にいないのですがこの者は自分で奴隷になりまして、自分で買取手を選べる契約をしています」
「そういうのもあるのか。それで特殊奴隷か。ちなみにいくらなんだ?」
「金貨300枚でございます」
予想以上に高くて驚いた。奴隷の相場がよくわからないがこのくらいなのだろうか。
「………他のやつもそのくらいするのか?」
「いいえ。この者だけです。他は金貨100枚から200枚前後です。ここまで高い理由はいくつかありますが、まず若く器量がよく処女で性交渉が可能なこと、さらに魔法適正が火、水、風と3属性もあることが理由としてあげられます。獣人はどの種族でも基本的に1属性で稀に2属性というものがいますがこの者は3属性持っております。本来でしたらここまで高くはありません。元々農民ですし元冒険者でもありませんし、何かできるという能力あるわけでもありません。獣人ということも含めると本来はもっと安いのです。買い手を選べるというのも安くなる要因ですな」
「なんか………高く売っていいのか安く売っていいのかわからんな」
「ええ。魔法適正を調べて驚いたものです。買ったはいいものの、ここまで値段設定が難しい者は初めてですよ。しかも自分で買い手を選べるのですから。本来なら選ぶことはできないのが普通なんですがこの者は自ら奴隷になっているので選べるのです。前の秋頃に来たのに未だに売れ残ってるのはそのせいなのです。困ったものですよ。貴族様も欲しがったのにもかかわらずです。法で決まっているので我々もたとえ貴族様の要望でも売れないのです」
「………………」
兎人族の娘は気まずそうにし、周りの奴隷たちはジト目で見ている。貴族でも法には敵わんか。
まとめると
自ら奴隷になったので自分が買い手を選べる。
獣人だが魔法適正が3属性あって凄いレア。
獣人なので値段は安い方。
若く器量がよくて処女なので値段が高い要素がある。
こりゃ確かに売るの難しいわ。高くなる要素があるのに買い手を選べるせいで売りにくそうだ。何となく商会長の苦労が分かってしまう。正直かなり良いと思うんだよなぁ。音に強いのも良いし、武器も戦鎚と槍ってのも面白い。あとおっぱい大きいし。
「他には何かありますかな?」
「先に二人目と三人目は外してもらって構わん」
「かしこまりました。お前たちは下がってよろしい」
「はい」「…チッ」
商会員が二人を連れて行った。そんな去り際に舌打ちする下っ端感出さんでもええやん。
「じゃあ逆に俺に聞きたいことはあるか? できるだけお互い納得してるほうがいいだろうしな。特に兎人族の娘は質問あるだろうしなぁ」
「苦労しているのです。では先ほどと同じように順番に行きましょう。そちらから」
一人目の狼人族の娘は考え出してしまった。「う~ん」と声を上げて考えている。だがすぐに考えはまとまったようだ。
「私は普通の生活をさせていただけてちゃんと給金をいただけるのなら構いません。命令には従います!」
「そりゃ当たり前のことだと思うがなぁ。特に変な生活させる気はないしなぁ。ちゃんと飯食って前衛やってもらわんといかんし」
特に希望は無しということだろう。扱いやすそうだな。
「では、君は時間がかかりそうだから後回しにします。次」
「私も特にありません。求められることには全力で応えたいと思います!」
この二人はやたらアピールしてくるなショタコンだからかな?
「じゃあ問題児どうぞ」
「…問題児じゃないです。えーっとそうですね。食事はどんな内容でしょうか?」
「どんな内容って言われても俺と同じものを食べてもらうが、味には自信あるぞ」
「では服や寝床などは?」
「もうこっちの条件全部言うわ。服も3着は買ってやるし足りないと思ったら追加で買うし汚れて着れなくなっても代わりのを買う。武器も防具も全部買ってやる。俺は宿屋暮らしじゃなくて家を持っててな。部屋が一部屋余ってるからベッド付の個室も与える。家事は俺以外にも住んでる二人と一緒に分担してやる。あと風呂があってな。風呂は家にいる日は毎日だ。質問はあるか?」
兎人族の娘含め横の二人も内容に驚いているようで目を見開いて驚愕の表情を浮かべている。
「で…では冒険者活動をされるそうですが、その…私が奴隷だからと酷使したりは…」
「それやる意味あるか? うちの二人はそういうの嫌いだからないな。ちゃんと正式なパーティメンバーの一人として扱う」
「では、最後に…その…性交渉は………」
「そのうちお願いするんじゃないか?」
「わかりました。私からは以上です」
かなり良い条件は提示できたと思う。後はこの子が俺に買われることにOK出してくれるかどうかだな。性格も問題なさそうだしな。一人目も経験値が高いってことを考えると買いたいが金がない。
ついでに”簡易鑑定”でも見ておこう。
レイ
成長性:A
おお。Aじゃないか。シエラとリーネ以来だな。使うたびに何の成長性かわからんがAってことは成長幅も大きいんだろう。そう思うことにしよう!
「さて、いかがでしたかな? お気に召す者はおりますかな?」
「ああ。兎人族の娘を買いたい」
「…どうだ? この方に買われてもいいか?」
商会長は不安そうに兎人族の娘に聞いた。
「是非お願いします!」
元気よく答えてくれた。やったぜ! 新しいおっp…パーティメンバーゲットだぜ!
「お…おお。そうか! よかった。やっとお前を手放せる!」
「で、いくら安くしてくれるんだ? 来た時に腹たつ態度取られたし、こんな扱いに困ってるのを買うんだから期待していいな?」
「…しまった。安くする口実を増やしてしまうとは……商人失格ですね。金貨270枚でいかがでしょう?」
「1割引か。それでいいよ。商人には搾り取られることが多かったもんでな…」
アカリやアンビエンテに比べたらこの爺さんは楽だ。というか楽な流れだったというべきか。
「では準備をさせますのでこちらでしばしお待ちください。契約の前に支払いをお願いします」
「わかったよー」
商会長が3人を連れて下がっていく。俺はその間にアイテムボックスから金を用意する。
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