第40話

半分呪いのような契約を押し付けられた俺はデートを中断してそのまま実花後輩の家で初夜をさせられようとしていた。

あの後涼奈さんはギルドに用事があるからと言ってみずきちゃんを引っ張って帰って行った。

俺は既に契約で縛られているためどうすることも出来ず諦めて実花後輩


「さあ先輩の初めてを捧げてもらいますよ。」


実花後輩は俺に唇を当てながら嬉しそうに笑う。

妖艶な笑みと例えられるなら嬉しいのだが目の光を完全に失ったハイライトの無い目で笑われているので怖い。

そう例えるなら某国の王妃にあたる階位を務めていた人物並みに目が笑って居ない。

大抵王妃などは仮面をつけることが多く元庶民の人物から上流階級の仲間入りをした人たちなどもあからさまに目が死んでいるように見える人たちも多くいた。


「先輩どうして目を逸らすのかが気になりますね。

 初心な反応なら先輩どこか誤魔化そうとするはず。

 それをしないってことはまさか。」


カタカタと歯を鳴らし目が一瞬にして充血した。

憤怒と困惑の感情が表に零れ落ちるように決壊していた。

この興奮しつつも冷静になろうと脳が命令している状態は実花後輩が偶になる病気みたいなものだ。


「いつの間に、いつの間に童貞を捨てたんですか!」

「えっとつい一昨日に。」

「誰ですか!涼奈さんとかいう女ですか?」

「う、うん。」

「あの女!」


瞳に嫉妬の赤い炎が宿る。


「まあまあ、そんな妬かないでくれ。」

「先輩の私が美味しくいただくはずだった新鮮な童貞を汚したんですよ。

 許せるはずないじゃないですか。」


さらに嫉妬の炎に燃料がつぎ込まれ白炎にまで上昇する。


「なら実花後輩は俺のことを嫌いになるのか?

 それくらいで嫉妬したり嫌いになるようじゃあ夫婦になるんだろう。

 困難のない家庭なんてつまらないじゃないか。」


実花後輩は嫉妬の炎を燃やす瞳を少しだけ揺らがせた。

心の中に迷いが生じ始めた。

 

「もし子どもを作ったときにきちんと聞かせられるお話になるかい?

 お互い教育なんかでぶつかり合うこともあるだろうし社会に出た時だってそうだろう。

 きちんと互いに落としどころをつけないと楽しくないぞ。

 こういう時はお酒でも飲んで少し吐き出すくらいにしとくのがちょうどいいさ。

 相手になるよ。」


久しぶりにバーテンダーの仕事をしようと思った。


実花後輩の家兼事務所には意外と宅飲みをするのか焼酎にブランデー、ウィスキーと様々揃っていた。

バーテンダーの仕事をしていた時は実花後輩は簡単なカクテルしか作れなかったのだが今も作っているのだろうか。


「お、栗があるな。即席でアレを作ってみるか。」


生の栗を発見したので少々邪道の作り方ではあるがこの状況にピッタリのお酒を造ることにした。


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スライム道

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