第8話

「この高野豆腐の煮物美味しいね。」

「は、はい。」

「ねえねえ、葵さんってさ。さっきまで童貞だったでしょう。」

「ゲホゲホ。」

「大丈夫。」


そう言って力丸さんは背中をさすってくれるが元凶は彼女のことには変わりない。

俺の意味ありげな視線に気が付いたのかとても楽しそうに話しだす。


「だって君さっきからずっと私の顔をチラチラ見て逸らすんだもの。

 そりゃあ初めてだってわかるよ。」

「そ、そんなに分かりやすかったですか?」

「うんうん、最初はてっきり財閥の人かと思ったけどあの人たちって結構遊んでるしさっきので確信したしね。」


先ほどの自己紹介のことだろう。

それにしても女子には口では勝てないというが主導権を握られっぱなしなのもそもそも女子と話すことの少ない自分には不思議な感覚だった。


「もしかして男子校みたいなところだったかんじ?」

「いえ、自分は外れスキルでしたしてとにかく稼ぎたかったので。」

「ねえもしかしてだけど乳化のスキルって生物には基本的に効かないの?」

「あ、はい。生物の場合だと乳化は皮膚の表面のみに作用する仕組みなのであとは骨に直接触れるなどしないと乳化は出来ない仕組みです。」

「ふーんきちんと教えてくれるんだ。でもアドベンチャラーたるもの他人にスキルを教えてはいけないよ。」

「いや力丸さんが聞いたんじゃないですか、それに私はアドベンチャラーではありませんし。」


するとまた眉間に皺を寄せてきた。

何かまた不機嫌になることをしでかしてしまったのだろうか。

手を伸ばして頬を引っ張て来た。


「私と愛したときはきちんと名前で呼んでくれたのに何で名字で言うのかなこの口は、ねえどうしてかな?」

「い、いたいでふ。」

「なら私の名前は。」

「涼奈さんでふ。」

「よろしい。」


そう答えるとようやく涼奈さんは頬を引っ張る手を放してくれた。

そしてご飯を食べながら唇に手を当て色っぽいポーズをとっているを眺めていると返答がきた。


「でもねえ、こんな草食系じゃあね。もっと肉食系になってくれないと私たち死神乙女(ヴァルキリー)・挑戦士(ウルズ)たちは認めてくれないよ。」

「え?」

「外れスキルと言っても多少モンスターを選ぶってスキルだけでしょう。

 それなら死神乙女・挑戦士に加入してもらっても良いと思うしね。

 よかったね君が初の男性社員だ。」


「いやいやいやいや、冗談でしょう。」

「なんだい、お酒を飲まないと冒険に出られないかい?」

「そういうわけじゃないんですけど。」

「なら決まり早速行こう!時間はいっぱいあるから今のうちにダンジョンに慣れちゃってさ、さっさと退職届出しちゃおうよ。」


この彼女の遊ばれているような感覚に引っ張られている気がした。


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スライム道

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