第6話 R

チュンチュン

小鳥のさえずりを聞いて目を覚ました。


「あれ、俺は確か久々の休みをもらって飯作る気が起きなかったから居酒屋で飲んでそのあとは何したっけ?」


むにゅう~


手のひらにすべすべで柔らかくて温もりを感じる物体が触れたことを感知した。

彼はそれを初めて触った物体だと判断し確認を行うために数回触れる。


「ふむ、思い出したぞ。

 これは絶対的なる死!

 強者による搾取!」


某2世紀前に出版された親父を追いかけて親父と同じ職業になり親父と会う物語のモブ敵が言っていたセリフを言ってみたが大体思い出した。


酔った帰りになんか穴に落っこちて夢だと思ってたけどスライムやらミノタウロスやらに乳化スキルをかけた記憶はある。

夢の中で牛骨ラーメンが出てきたけどこっちは本当に夢だろう。


しかしぞっとする。

俺のスキル乳化は文字通り乳化を触れている水と油の物質を任意の範囲で連動させて行えるスキルだ。

今回は触れていた対象がスライムという不定形だということと偶々だとは思うがミノタウロスの頭蓋骨と角が接触していたのだろう。


ちなみに皮膚などについている垢は汗を同じ体液として計測できるから綺麗にできる。


そしてその能力を使い寝ぼけながらも事を致したことも覚えていた。


「ん、んん~。」


今喘ぎ声を上げている人はアドベンチャラーだろう。

自分が逆立ちしたって勝てないような人だ。

ダンジョンでの記憶を垣間見るに変身系のスキルをお持ちのようだ。


変身系のスキルは発動時に黒歴史的ポーズを取らなければならないという弱点以外に弱点が無いので非常に優秀なあたりスキルと聞いている。


「とりあえず今日は休みだしご飯を作るか。」


疲れ切った体に鞭を打ってご飯を作りに行く。

流石に30連勤もしていたのだから昨日酒を飲んでいたとしても疲れは残る。


30日も家を空けていたし埃が凄い。

先に掃除を優先させたいが彼女が起きた時に何の朝食もないのはまずいと思いそそくさにご飯を作ることにした。


ご飯と言っても仕事で家を空けていることが多いのでもっぱら非常食に近い保存食を買い込んだり自作したりしている。


「とりあえず干し飯(ほしいい)と干し肉、それと野菜はどうっすか。」


野菜は保存食の中から使えそうなものを選ぶ。


「乾燥したものばかりだと風味があまりにもつまらないし乳化を使ったスープは朝は重い。

 ならとりあえずピクルスの中でも味を薄みにしているものでかつ素材本来の味を引き立てる感じで作るのがベストか。」


缶詰のホールトマト、瓶詰からホウレンソウ、キャベツのピクルスを出してサラダとして盛り付けていく。

それだけでは味に酸味が集中してしまうので大根の古漬けを添えて塩味と旨味をさらに足す。


後は干し飯をお湯で戻してライスにする。

味噌汁も干しわかめでついでに作っておく。

味噌は好みが別れにくい白みそが好ましいがあいにく切らしているので赤みそで代用する。


干し肉は塩抜きをしたのち火を通してほんの少しでも味わいが深くなるように調整する。

塩抜きする際に出た汁を用いて高野豆腐で煮物も作れば朝食には十分すぎる食事が出来上がった。


「とても良い香りですね。」


とうとう朝チュンしてしまった彼女と対面で話すことになりそうだ。


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スライム道

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