怪異語りの灰被り姫

硯哀爾

はじまりの頁

■月■日


 今日から日記を書くことにします。日記帳をもらったのはずいぶんと前だけど、日記を書く意義が見出だせたような気がしたので、少しずつ書いていこうと思います。

 日記。今日あったことを書きつづるもの。

 全部忘れない私にとっては必要ないものかもしれないと思っていましたが、どうやらそうでもないみたいです。■■■■の言うことは正しかったのです。彼は私なんかと比べ物にならないくらい頭がいいので、こうなることも見越していたのかもしれません。恥ずかしいから、聞こうとは思わないけど。

 日記には、印象的な出来事の他に、他人に言えないようなことも書くみたいです。普段は見られないようにしなければならないそうです。

 でも、もしかしたら。私に何かあっていなくなった後、■に役立ててもらえるかもしれないのです、この日記が。■本人に渡らなくても、■■■■や■■■辺り……■■■と、■■もかな? とにかく私と仲のいい子たちがこれを見つけて、役に立つものと判断してくれることを望みます。

 私が代用品スペア、身代わりとして役目を全うできる日が来ますように。■の役に立てますように。

 そのために、これから頑張ります。■やみんなには、私が頑張っていたって知られたくないけど、精一杯頑張ります。文字として残しておけば、最後の最後まで頑張れる気がするのです。

 明日のデザートは私の好きなカスタード・プディング。楽しみなので寝られるか心配です。いつもは寝るのがいやだけど、明日楽しみなことがあると少しだけ好きになれます。

 でも、いちばん好きなのはやっぱり■がくれたロリポップ。あればかりは、何物にも代えられません。

 甘くてまあるい、お砂糖の宝石。もう舐め終わってお腹の中だけど、あれは私にとって唯一無二の宝物なのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る