日曜日 その十二

目を開けた。


今、自分が置かれた情況がよく飲み込めなかった。


両手は鎖に縛られ天井にぶら下がっている。足も鎖にしばられ、床と繋がっている。体には布切れ一枚さえいない。

裸のままつるされている。


どんな場所だろうと思い、周囲を見回したら、ただの四方形の部屋だ。天井にある、黄色い灯はほんの少しの場所しか照らしていない。まるで、スポットライトを受けている舞台の主演みたいな情景だ。


どうして、こんな所に僕はいるんだろう。脳細胞を必死に働かせた末、ようやく思い出した。僕は桃色の煙に包まれて気を失っていた。


葉月はどうなったのだろう。


桃色は葉月を殺したといって入るが、僕は信じない。だって、葉月は強い。どんなひどい傷を負っても、治れる。今だって、どこで傷を癒しているに違いない。それに、何よりの証拠は僕がまだ生きていること。葉月はいったのだ。地球にいなくなると僕も死ぬと。僕がこうやって生きているかぎり、葉月も死んでいない。はず。


つるされていると体が段々疲れてきた。腕は引っ張られて方から抜けそうな感じもした。全身が誰かに打たれたような痛感が走った。体力が底をついた僕は目を閉じた。


再び目を開けたのは、体がくすぐられている感覚が伝わってきたからだ。


目を開けて見ると、誰かが僕の胸を舐めている。ほかの誰でもなく、桃色だ。


「何してるの!桃色!」


桃色は顔を上げ、僕を見つめた。


「何をするって、見てのとおり、フモトの胸を舐めているよ」


桃色は口元を少し上げて笑った。目の中は欲情に溢れていた。顔は赤くなっていて、汗が額からゆっくりと流れていた。


「やめろ!そもそも、桃色は黒魂に操られておかしくなっているよ。お願いだから、正気に戻って」


僕の願いに桃色は鼻で笑った。


「おかしくなったと?笑っちゃうね。だって、フモトのことを愛しているだけなのにどこがおかしくなっているの?それに、黒魂に操られただって?違うの。私は操られてないの。私と黒魂はお互いを利用しているだけなのよ。黒魂は私の願いをかなえてくれる。代わりに、私はこの体を使わせてあの月女と戦う」


「それが操られているってことなんだよ、サクラ!目を覚まして!黒魂に騙されないで!」


「フモトにはわからないでしょうね。私の気持ち」


桃色は再び、僕の胸を舐めはじめた。


目を閉じている時はただくすぐったい気持ちだったのだが、桃色が舐めているという事実をわかってしまうと、気持ち悪くなった。桃色が気持ちわるいのではない。この状況が気持ち悪い。


「やめろ!桃色。お願いだから、僕の知っている桃色に戻って」


桃色は舌を止めた。


「フモトの知っている桃色は今の桃色だよ。何も変わった事はないよ。何で戻ってという?フモトの言う意味が分らない」

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