4月2日(土)

・療育のOT検査があった。検査は一時間くらい。結果等はここには書かないし、大体予想していたことなのでやっぱりなという感じ。それより、先生に私の育児方針を真っ向から批判されたのが本当にキツかった。「あなた何度も娘さんにトイレ大丈夫なの?と言いますよね。僕はよほど注意しようかと思いましたよ。5歳にもなればトイレに行きたければ自分で行きますよ。あなた家でもトイレに限らずすべてにそんな感じでしょう?だから娘さんは口で何でも言い返してくるんですよ。あの口の達者さはその産物です。身体を動かさずに、言葉で何とかしようとする」……。何?これ。もう私死んでいい? 確かに私は何でも口うるさいよ。けど、トイレに関してはそもそも娘はトイトレのデスロードがあったんだよ。人より遅く、人より険しいデスロードが。そして娘は常人では考えられないくらいトイレが遠いの。それが大人の私から見ると心配で仕方ないし、傍から見てて「あ、これトイレ我慢してるな」って時も数えきれないほどあるの。モジモジしてる子供の隣で日常を過ごすのはしんどいの。いつ行くんだろう、そろそろかな、じゃあこれはもう少し後回しにした方がいいのかな、えーまだ行かないの、早く出かけないと、みたいなのがエンドレスなんだよ。それを堪えてるのは全部私なの。勝手に行かせておけばいいと言うけど、娘は甘えが強くて今でもトイレについて来てほしがるし、私はその都度手を止めて付き合わなきゃいけないんだよ。中断のストレス知ってるか?日常にまんべんなく中断のストレスの種が蒔かれてるこの状況あんたに分かるか? それに娘は昨日突然おもらししたんだよ。それで周りに迷惑掛けたんだよ。このご時世のおもらしは普通のおもらしとは違うんだよ。片付けと消毒の手間も、謝罪で消えたくなる心の消耗も、全部私が請け負ってるんだよ。でもそれは仕方ないよ、私は親だからな。それを覚悟で産んだからな。分かってるよ。だからそれはいいよ。でもな、そんなこと想像もつかないアンタになぜ「口うるさい」の一言で片づけられなきゃいけない? こっちにはこっちの歩いてきた歴史ってのがあるし、背負ってる事情があるんだよ。それは徹頭徹尾、唯一無二なの。代われる人間は誰もいないの。要素を挙げていけばキリがないほど、家庭の、人間の事情は、替えがきかないんだよ。何が、口が達者、だ。その子3歳まで喋らなかったんだよ。口が達者で結構だよ。上等じゃねーか。ここまで喋れるようになってくれて私がどんだけ安心してるか、お前には分からないだろうな。二度と私を批判するな。


……という罵詈雑言が心の中で渦巻くだけで、私は一つも言い返せず、かわりに言ったのは、「言葉が先行するタイプの人間というのは、私もそうです。私も不器用で、今なら彼女と同じ診断が下っているであろう人間です。そういう人間は、間違っているんでしょうか? 私はこういう場所に来るたび、自分が間違っている、欠落している、正しい道を行けなかった側の人間だということを嫌というほど知らされて、すごく苦しいです。こういうものは、本当に障害なんでしょうか? 人間のタイプとして考えることはできませんか? あっちが健常で、こっちが障害だなんて、その枠組みがおかしいとは思えませんか?」とかボロボロ泣きながら言ってしまい、呆れた先生の目からは光が消え、「それは社会が決めます」と一言。「社会で生きて行く上で、できないことが多いのは障害とみなされます。だからできることが一つでも増える、凹を均していくことは、彼女のためになるんですよ。あなたが子供だった頃とは、時代が違うんです。タイプだ個性だと言ったところで、放置していても身に付くことはありません。そのための療育です」。完全にその通りです。私は、何を間違ったんだろう。生まれてきたことが間違いなのかもしれない。けど、そうなれば、私が娘を生んだことも間違いになり、娘が生まれてきたことまで間違いになってしまう。私は、本当にどうしたらいいんだ。つらい。と思いながら、公園に連れて行き、自転車を漕いでいたら、信号のところで娘が私の手を急に握って来て、「ママの手やわらかくてかわいいね」と言ってきて、またボロボロ泣いた。二時間遊ばせ、夜ご飯は夫がいないので簡単にうどん。人生が分からない。

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