2-20.Madonna of the Carnation
「あらすじはここまでである。……レオ、貴様には判断させぬ。今後も我輩の指示を忠実にこなすがいい」
「分かってるよ」
「ヒューガ」
「はい」
「貴様はどうする?」
JVのその質問には、ヒューガが答えるよりも先にレオが反応を示した。
青筋が浮かぶほどの、あからさまな苛立ち。
わざとヒューガを優位に立たせるようなJVの言葉運びと、顎に指を当てて考え始める、拍子抜けするほどに間抜けなヒューガの表情に。
「うーん、検討してみます」
「ほう?」
多少の思考を置いてヒューガの発した言葉には、レオのその苛立ちが増大したように見えた。
JVはチラリとレオを見て、マフラーの下で片口角を上げている。
だがレオはその怒りを放出することはない。
表面張力で堪えるコップの水のように、レオは歯を食いしばって耐えていた。
彼は理解しようとしているのだ、自らの置かれた立場を、必死に。
「配信もしなきゃいけないですし、まあ、参加できる時は参加します」
「オーケー。ではレオと同じメールをヒューガにも送るようにはしてやろう。……レオ、貴様は欠かすことなく我輩の召集に来るがいい。良いな?」
「……ああ」
「ではここからはヒューガ、貴様も強制させてもらうが」
ムカつく。
この金髪の女の存在が至極不快だ。
目線はJVに向けられているが、レオの頭上にはその台詞ばかりが浮かんでいるような気さえする。
それに対してヒューガは、明日の朝食のメニューでも考えているかのように穏やかな笑みを浮かべていた。
「来週のレースも、先日のレースに続きトップランカー総出の企画を構想している。どこかの誰かのせいでジジのフォロワーが爆増したのでな」
「私のフォロワーは有能ですね、誇らしいです」
「各レーサーとの打ち合わせのグループに、後日ヒューガも参加させるようジジに伝えておく。必ずエントリーするである」
「了解です」
「レオ、当然貴様もである。分かったな」
「聞かれるまでもねえ」
「オーケー。……今夜の報酬はこのあと貴様らの口座に振り込むよう手配しておくである。今日は上がるがいい」
「おう、あばよJK」
「誰が女子高生だ───」
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