第5話


「ここが私が入っているオカルト部よ」

「へぇー」

「あなたの存在がオカルトみたいなもんだし、向いているかもよ?」

「まぁ、そうだね」

 私は先生に頼まれたこともあって蓮に部活の紹介をしているのだ。

「んー、なんかいろんな部活見るの面倒だし、ここに入部しようかな?玲香もいることだし」

「あら?誰かしら?その子」

 私達の後ろから女性の声がかけられる。

「あ、はじめまして。佐藤蓮です」

 蓮はくるりと後ろを振り返り、礼儀正しくお辞儀をする。

「あら、どうも。はじめまして。オカルト部部長の皐月加恋よ。入部希望者かしら?」

「えぇ、そうです」

「あら、そうなの。……あら?」

 蓮に少し遅れて部長の方を向いた私を見て部長が驚きの声をあげる。

「玲香ちゃんが誰かと一緒にいるなんて珍しいわね」

「あぁ、蓮は転校生で、蓮の案内を私が先生に頼まれただけよ」

「あっれぇー?もしかして玲香ぼっちなの?」

 蓮がにやにやと私の方を見る。

 その笑みにはからかいの色が含まれていることが見て取れた。

「うっさい!」

 私は蓮の頭を叩き、黙らせる。

「……本当に、珍しいわね」

 私達のやり取りを見ていた部長が驚きの表情を浮かべる。

「うっ……」

 何故か私は気恥ずかしさを覚え、顔をそむける。

「あ、この部活に入部するための条件とかってありますか?まだこの部活のこと、何も聞いていなくて」

「あら、そうなの。えっとね。まず、入部に条件はないわね。それで、この部活の詳細なんだけど。この部活の活動日は特に決まってなくて、基本自由。玲香ちゃんはたまにしか顔を出さないけど、他の子達はだいたい居るわね。ここで勉強している子なんかもいるわ。部員数は4人で。女子3人。男子一人。私が三年生で、玲香ちゃんが知っての通り一年生。他二人は二年生よ。他の二人もそろそろ来るはずだけど……」

「どうも」

「こんにちは!」

 そんな話をしていると、二人が部室にやってくる。

「あら、来たわね。今日はね。入部希望者がいるから、みんなでまずは自己紹介をしましょう」

 部長はそう言ったあと、蓮のために部室の端に置かれている机と椅子をみんなの分の机と椅子が置かれている中央に持ってくる。

 その後、各自自分の椅子に座る。

 蓮も今足してもらった椅子に座る。

「じゃあ、まずは私から。さっきも言ったけど、私は部長の皐月 加恋。三年生よ。よろしく」

「じゃあ次は俺か。副部長で二年生。天満弘樹。よろしく」

「私は間宮ひなだよ!よろしくね!仲良くしてくれると嬉しいな!」

 弘樹先輩はぶっきらぼうに、ひな先輩は元気よく挨拶する。

 ひな先輩の場合は元気よくと言うより、もううるさいと言っても差し支えないほどだ。

「耳元で大声を出さないで。うるさい」

 ひな先輩の元気がありすぎる挨拶を隣で聞いていた弘樹先輩が耳を塞ぎ、心底嫌そうな表情をひな先輩に向ける。

「えぇー!いいじゃない!元気なのはいいことだよ!」

「お前のは元気というよりバカだ」

「ちょ!バカって何よ!バカって!」

 バカ扱いされたひな先輩が不満の声をあげる。

「事実だろうが……」

「何よ!」

 二人はいつもどおりにらみ合いに発展する。

「ふたりとも夫婦漫才を始めないで。まだ入部希望者の子の自己紹介ができてないわ。夫婦漫才はあとにして頂戴」

 そんな二人を部長はなだめる。

 その光景を私は一人傍から眺める。

 ……それがオカルト部のいつもの光景だ。

「「誰が夫婦だ(よ)!」」

「あはは」

 息ピッタリの二人を見て蓮が嘘くさい笑い声をあげる。

「どうも。はじめまして。一年生の佐藤 蓮って言います。よろしくおねがいします」

 蓮は三人にぺこりとキレイなお辞儀をする。

「ところで先輩たち。少しいいですか?」

「あら?何かしら」

「自分。最高に面白いオカルト的な神秘的な現象を知っているんですよ」

「あららら?何かしら!」

 オカルト大好きな部長が期待を込めて蓮を見る。

 蓮はその期待に答えるように口を開いた。

「僕、不老不死なんですよ。実はね」

 

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