私が毎日殺す君の名を私は知らない

リヒト

プロローグ

 なんにもない。何の変哲もなく実につまらない、そんないつもどおりの日常。

 そんな日常を私は生きる。生きることを望む。

 変化を渇望しながら、変化を望まない。

 

 塾の帰り。塾の授業の時間が長引いてしまいいつよもより遅い時間、真夜中の中、私はいつも通る人通りの少ない道を歩いていた。

 完成前のビルの横を通っていた時、急に私の前が陰る。

「あ、どうも」

 ぐしゃ

「え?」

 私は呆然と声を漏らす。

 何故か?その理由は実に単純明快。

 空から男の子が降ってきたからである。

 え?いや、なんで?

 意味がわからない。

 私が呆然と立ち尽くしていると、トマトのように潰れた男の子の血の匂いが漂い、私の鼻腔をくすぐる。

「ッ!」

 私は慌ててその場から立ち去った。

 

「きゃんきゃん!」

 犬が情けない悲鳴をあげ、目の前の人影から逃げようと懸命に足を動かす。

 しかし、あっさりと捉えられてしまう。

「えい」

 そして……血しぶきがあがり、暗闇に浮かぶ人影を真っ赤に染め上げた。

 

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