第20話

 私が諒くんと出会ってすぐくらいの時、沙希ちゃんと2人で飲みに行った。

沙希ちゃんは、お酒があんまり強くなくて、すぐに真っ赤になっちゃう。

お酒強くないけど、飲みに行くのは好きなんだ!って、普段より陽気で楽しい感じになる。

私は、割と強い方。

だいぶ、酔っぱらってても顔にはでないし、結構飲めるタイプ。

「沙希ちゃ〜ん!顔真っ赤だよ〜!」と、私が言うと、沙希ちゃんは、両手で自分の両頬をはさんだ。

「顔、真っ赤ついでに、発表しま〜す!!

彼氏ができました~!!」と言った。

「えっ!?ほんと?誰、誰?私 知ってる人?」

「うん、茜 知ってるよ〜。

ジムのインストラクターの山村諒くん。」

「えっ……」

たぶん、この時の私は、驚いたのとショックなのとで固まってたかもしれない。

でも、沙希ちゃんは酔っぱらってたから、そんな私には気がつかなかったと思う。

「山村くんから告白されたの?」

「告白されたってゆうか、いきなりキスされた。あはははは〜!ちょっと犯罪スレスレ〜

ウエイトやっててさ、サイドについててくれたんだけど、キツくてさ~、あぁ~~ダメだ〜〜って目を閉じてたら、キスされてさ~。

えっ?なんで?って聞いたら、苦しそうだったから!って!あはははは〜

人工呼吸した方がいいのかって思って!!って、そんな訳ないですよね!すみません!

なんか、思わずキスしたくなっちゃったんだ!ってゆうの〜。

なんか、その日はびっくりして帰ってきちゃったんだけどね。

気まずいなぁって思いながら次に行ったら、

この間は、ほんとごめん!一緒に食事に行ってもらえませんか?って言われて、食事に行ったの。

で、いろいろと話しして、前の男にこっぴどくフラレたので、今恋愛自粛中なのって話をしたら、俺 いきなりキスなんかして軽い気持ちって思われそうだけど、本気だから!恋愛自粛明けのリハビリくらいのお試しでもいいから、俺と付き合ってほしい!って言われてさ〜。

ちょっと迷ったけど付き合うことにした~!!」


沙希ちゃんから聞いた、その馴れ初めは、なんだか少女マンガのようで、そんな風に恋が始まることって、現実にあるんだな~って思った。

なんで、私じゃなかったんだろ……

なんで、諒くんに興味なかった沙希ちゃんなんだろ……

私は、初めて会った時から、諒くんのことが好きなのに……


沙希ちゃんは、普段ジムに行ったりしても、諒くんとイチャイチャすることはなかった。

お酒を飲んだ時に、ちょっとノロケるくらい。



 何ヶ月後かに、沙希ちゃんの家で、諒くんと3人で鍋パーティーをした。

沙希ちゃんは、自分ちということもあってか、割と飲んで、酔いつぶれて寝てしまった。

私は、諒くんと2人で飲み続けていた。

「ね〜諒くん!

沙希ちゃんと付き合うきっかけって、ジムでいきなりキスしたんだって?」と聞いてみた。

「えっ!!わぁ~〜〜〜!!マジか!!

それ、茜ちゃんに喋ったの〜!!

マジで、ハズいんだけど〜」と、左手で顔を隠し下を向いた。

「やるね!!」

「いやいやいや!!やるね!じゃないよ!!

マズイって!!

インストラクターがジムで会員さんに手出したなんて、クビレベルだよ!!

わかってたんだけど、なんか、気持ち抑えられなかった。」

「いつから、沙希ちゃんのこと好きだったの?」

「あっ、これ、まだ沙希にも話したことないんだけど、実は、俺、沙希と大学一緒なんだよね。

俺の方が1個下だし、学部も違うから、俺の存在全く知らないと思うんだけど。

学食でよく見かけた人だった。でも、名前も知らない人だった。

ある時、区役所でフードドライブあるって、俺 超貧乏学生だったから、友達と行ったんだ。

そしたら、彼女ボランティア活動でそこにいて、笑顔が天使みたいだった。

さきちゃん!って、呼ばれてて、さきちゃんって名前なのか~って、初めて知って。

その後 彼女、大学を卒業して、それから会うこともなくて、1年後 俺スポーツジムに就職して、希望してた店舗とは違うとこでやってたんだけど、○○店にインストラクターの欠員出たから、そっちへ異動って言われて、行ってみたら、沙希がいてさ、すげー運命だって思っちゃったんだよね!!

って、結構キモいでしょ?こんな話。

ひくかな〜って、沙希に言えないでいるんだけど。」

「引かないよ!!ってゆうか、素敵すぎ!!

少女マンガじゃん!!」

「あはははは〜!少女マンガは、読んだことないからわかんないんだけど、そうゆう感じなの?

インストラクター突然キスするみたいな?あはははは〜!」

「インストラクター突然キスするは、ないけどさ!運命的じゃん!!」

「茜ちゃん、とりあえず、この話、沙希には内緒ね!!ハズいから。」

「了解!あはははは〜!!」


私が、諒くんに気持ちを伝えることは、絶対にないだろう。

沙希ちゃんに、気持ちを伝えることも、絶対にないだろう。

諦めるしかないのだろう。

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