300字SS 2021

たぴ岡

愛しいきみへ

 きみの眠る石の前で手を合わせる。今年もまたきみのもとへ行くことができなかった。それどころか僕は何もできやしなかった。早くきみに会いたいよ、なんて言ってみても僕にはそんな勇気がない。

 きみとふたりで幸せに暮らすのが一番の夢だった。それなのにこんな風に終わるだなんて、辛すぎるよ。きみはきっとこんな僕を見ても昔みたいに「ばかな顔するんじゃないよ」って、笑うんだろうね。

 けどね、僕はきみを失ってから一度も笑えていない。きみとの幸せを夢見るばかりで、でも覚悟はなくて。いつだって泣くことしかできないんだ。愚かな僕を許してくれ。いつだって僕はきみを愛している。だから、いつか行くから、そこで待っていてくれ。



お題「残る」300字

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