第3話★継ぎ苗★

別に、農家であったことはないのですが、

私は、割りと色々なことができました。

器用ではないです。


ただ、家庭菜園を借りて、1年目から、収穫物から継ぎの種を取り、それを蒔いて実らせる事ができました。


無駄に力んでいなかったのでしょう。


ずぼらな性格が、幸いしたかもしれません。

摘まずに放り出した実は、完熟し、きちんと継ぎの命を残してくれます。


なすもトマトもキュウリもオクラも、私は2年目から、種を買う必要がありませんでした。さつまいももニンジンもです。


特にキュウリは、不思議なことが起きました。通常、キュウリの花は、実を持っていて、咲く頃には、真横です。そのまま大きくなる実が、重くなって、垂れ下がるわけです。

ところが、私の継いだ種のキュウリは、上に向かって育つわけです。

縁起が良いことこの上ありません。

まっすぐに、上に向かっていくのですから

出世できそうです。


私は、どうしてそうなるか、知っていました。

でも、人には言いません。

内緒です。


私の手元に残された種は、皆、上に延びるキュウリの種です。品種改良がかなっているんです。


農業というほどではありません。

種を蒔いたら、実るまで世話をする。

心は疲れると土を懐かしがるんです。


土の有機成分は、アミノ酸で、体と同じです。人の文化は、小難しいことをこねくり回さなくてもわかるように示されています。


命は、吐息を受け止める体とワンセットなので、ポータブルな体が心を癒せないときは、似たような成分である土を求めるんです。


証明と言うことではなくて、原理原則というおおざっぱな理屈ですが、命は、そういうものなのです。


キュウリには、市販の種とは違う特徴が出たので、私のブランドです。

種のままでは、発芽できなくなっていくので、来年の夏、増やす必要があります。


1階の窓際に、グリーンカーテンを作れるでしょうか。本当に、やることが多い。


私には、小間使いが必要ですが、居ないのです。

私の秘密を知る人は、ずいぶんと恩知らずだと言わざるを得ません。


「私」の秘密を共有すると、

「皆」を見る目が変わります。


外国のかたとおしゃべりすると、「て、に、を、は」の使い方に苦労している様子がわかります。

けれども前文は、正しく表現できているのです。


きっと「あなた」は、見えている世界を変えてしまう。

だから、私は、私の秘密をお話ししても、あなたと共有することはないでしょうね。


キュウリの実が、上に向かって伸びる理由の答えも、この話の中に、ヒントがあります。

分かってしまえば、なんのこともない、秘密というほど声を小さくする必要もない。


秘密というもので、いつまでも隠しておかなければならないものは、大抵、悪いものなのです。

神秘という秘密など、見せたり話したりしても、「簡単に出来ない」から、秘密でも、どんどん話して良いものです。明かしても、秘密のままだから、凄いのです。


秘密というのは、結晶です。

大事なことばかりが集まっていることが、

秘密の正体です。


言葉は、正しく理解すれば、たくさんの

「うまくいくこと」を案内してくれます。


人生そんなに甘くない、ですって?

そんなことはありません。


実りを甘くするために、土に砂糖を撒く人はいません。

適切な土と環境であれば、実りは甘くなります。


体は、土と似ているのだと、お伝えしているじゃありませんか。


あなたの運命が甘くないと感じたなら

あなたの本人が、適切ではないのです。

あなたは、いつ生まれましたか?

あなたの土(体)は、豊かですか?

あなたの土は、あなたの種と良い相性ですか?種には、酸性を好むものもアルカリ性を好むものもあり、日向が適しているものも日陰が適しているものも有ります。


羨ましいから、日向に生きたいと、日陰の種が思ってしまったら、ただの命取りです。洒落になりません。頑張っている間も辛いだけです。


あなたの命の種は、あなたにしか理解できません。私のキュウリが、キュウリの世界の非常識なのと同じです。


あなたの命に適した一生を分かることで、

あなたの苦しみの大半が、「無駄」とわかります。その苦しみは、解放の気がつくための梯子だっただけだとわかります。


私もそうやって、私の命に気がつきました。

甘い実を知っています。

命は、甘い実を実らせる事が、できるものです。


…続




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