第2話 灰かぶり

母さんがいた頃は、良かったわよ。

ど田舎暮らしではあったけど、二人とも私を大切にしてくれた。

問題は母さんが死んでから。

あの糞親父、泣いてばかりで仕事のひとつもしなくなったんだから。

それどころか屋敷に私一人残して出かけるようになったのよ。

ありえないでしょ。泣きたいのはこっちだってのに。

多分その時に出会ったんでしょうね。あの後妻とは。

ある日急に「再婚したい」なんて言い出すんだもの。こちとらあんたが立ち直るまで色々世話かけてやったってのに、私よりも先に幸せになろうとするなんて、頭どうかしてるわよね。本当にあの時は一発ぶん殴ってやろうかと思ったわ。

まぁ、あいつは口がうまいのよ。親父を上手いこと口車に乗せて、堂々と家に転がり込んできたんだもの。強かな女。

そんなわけであいつが私のになったわけ。

近くで見たらまああ不細工で。

あの女はまだマシとしても、娘よ。娘!!

不細工を隠すための厚化粧がさらに不細工にしてるんだもの。笑いそうになったわ。

そこからはあんた達も知っての通り、いじめられる日々よ。

とは言っても、あんなもんでいじめたつもりになってるなんて。可愛いもんね。

結局自分たちが優位に立ちたいだけなのよ。

弱いから人をいじめるの。

しばらくして父親が死んで、「いじめはさらにひどくなりました」なんて、本には書いてあるんでしょうけど、そんなことなかったわよ。

だって家のことをしていればいいのよ?

あいつらとまともに暮らすほうがよほど嫌ね。あんな教養も気品もない奴らと一緒にいたら、私まで馬鹿になっちゃうもの。

「灰かぶり」なんてあだ名、つけられても特に何も思わなかったわ。むしろ、灰をかぶってるのはあんた達の脳みそでしょなんて思っちゃったくらい。あはは。

え?早く舞踏会の話をしろって?

そんなに焦らなくてもいいじゃない。

ここからが面白いんだから。

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