兄弟

ペサカ

兄弟

 あるところに二人の兄弟がいた。彼らはまだ幼かった。花畑に行った時のことだった。始めこそ仲良く遊んでいたが、兄はだんだん弟が鬱陶しく思えてきた。なぜこの生き物は自分の後をついてくるんだろうか、一人で勝手に遊ばせてくれ、そう思った。弟を突き放すと、全速力で走った。ついてくるなと叫んだ。しばらく走ってから後ろを振り返ると、弟はいなかった。兄はこれでやっと自由になれたと思った。

 しかし、しばらくすると兄はだんだん自分のしたことを悔やみ始めた。弟のことを考えると、とても心配になった。それと少し寂しさを覚えた。先ほどまで一緒に遊んでいた場所まで、小走りになりながら戻った。目元は少し濡れていた。

 そうして兄は、一人で楽しそうに遊ぶ弟の姿を見た。弟は元の場所から動いていなかった。彼は最初から兄のことなど追いかけてはいなかった。その場を離れるほか、兄にできることはなかった。

 弟の手元にあった2つの花冠を見落とすような兄には。

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兄弟 ペサカ @nishinoshini

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