第2章5
6月11日午前12時45分、一足先にゲームセンター前に辿り着いた人物がいる。フィギュアハンターの下位ハンターである。どうやら、ネット上でエクスシアの所在位置がバラバラなのは――。
「あの地図は釣りだったのか!」
「まさか、他のエリアも――」
道中で島風(しまかぜ)あいかに遭遇する事もなく、スムーズに進み過ぎたのも理由の一つだが、罠にかかってしまったとも言える。この下位ハンターは更に別のエリアも捜索するのだが――こちらも空振りに終わっている。
午前12時46分、下位ハンターの立ち去った後でゲームセンターに辿り着いた島風は、周囲に他のハンターがいない事を確認していた。しかし、他のハンターが接近するような気配はない。どうやら、島風が該当エリアに来た事で交戦を回避する為に別のエリアへ向かったのが半数以上――。
「この他にも地図はあるみたいだけど――どれも偽物みたいね」
島風はゲーセンの店内に入ることなく引き上げようとする。それでも、何か情報がないか店の外を見ても、格闘ゲームのポスターやクレーンゲームのプライズ入荷等の告知しかない。しかし、島風はクレーンゲームのプライズ入荷告知から、ある写真を発見した。それは、エクスシアである。
「どうやら、プライズ用のフィギュアをターゲットと間違えて送信した――?」
仮にプライズのフィギュアを情報提供した人物が、釣り狙いで情報提供したとしたら、その人物の狙いがいまいちわからない。ハンターの動きをかく乱させる為であれば、超有名アイドル投資家等の勢力に関する情報を提供した方が早いだろう。
超有名アイドルとフィギュアハンターが敵対勢力同士というのはネット上でも有名であり、そちらの方がハンターを大量におびき寄せる事も容易だ。
「だとしたら――!」
島風がハンターギルド等に情報を提供しようとした矢先、再びショートメッセージが送られて来た。
「今度はパチンコ店――の近くにあるゲーセン?」
距離が遠いのだが、パチンコ店の隣に併設されたゲーセンで目撃情報があると寄せられている。しかも、この情報は別の投稿者による物だ。しかし、島風は写真を見極め、自分のターゲットとは違う事を確認し、別の場所へと向かう事にした。
「どちらにしても、今回の情報戦は明らかにフィギュアハンターのシステム等を知り尽くしている人物が関わっている――」
色々と思う所があり、その怒りを誰かにぶつけたいのだが――下手に八つ当たりをすればまとめサイトがアフィリエイト目当てで炎上記事を書くのも目に見えていた。
午前12時50分、グラーフは目的地より若干離れた位置にあるコンビニで小休止をしていた。フィギュア専門店までの距離は200メートル弱か。
【エクスシア――過去に放送されていたアニメ作品に登場したパワードスーツ。悪の秘密結社と戦い、最後には――】
グラーフは黙読で有名ウィキとは別の動画サイト――そこの大百科に掲載されたエクスシアのページを閲覧している。世界線やアカシックレコード、更には別の作品にも同名の存在がある等の記述もあったが、今はターゲットとなっているフィギュアの部分だけが重要と考えていた。
「超有名アイドル投資家を――壊滅させた?」
グラーフは、ある一文に関して驚きを感じていた。グラーフは超有名アイドル商法等に対し、強い憤りを感じている。そうした悪質な商法、マスコミ等をただ同然で利用し、集めた資金で世界征服をたくらむ超有名アイドル――それを許す事は出来ない。
しかし、世界征服等に関してはWeb小説のテンプレでしか過ぎなかった。フィギュアハンター復活の真実も未だに分からないのもネックになっている。
『エクスシアのフィギュアは本来のターゲットではない。直ちに作戦を中止し、別のフィギュアをターゲットにせよ』
男性の声、それもボイスチェンジャーで加工されたような無線がグラーフのバイザーに響く。しかも、作戦中止とは大きく出過ぎている。これは明らかに別の人物がフィギュアを手に入れる為の工作だろう、と。
「このタイミングの確保中止はあり得ない。別のゲームであったように、フィギュアハンターに裏切り者がいるのか?」
グラーフがフィギュアハンターに裏切り者がいる可能性も――と考えた矢先、コンビニの前を通り過ぎたのは迷彩コートを着た人物――雪風真姫(ゆきかぜ・まき)だった。
「あの無線は、どう考えてもある作品を思わせる。フィギュアハンターで、この手法を使う人物――」
雪風には今回の黒幕が誰なのか予想が出来ていた。おそらくは、シャドウと言う偽名を使ってフィギュアハンターを混乱させようと言う魂胆があるのかもしれない。
しかし、仮に黒幕が分かったとしても、その目的が何なのかは分からない。ロケテスト等の正当な理由を出されてしまえば、手出しが不可能と言うのもある。
「何としても、黒幕の目的を上手く割り出さないと――」
雪風が指をパチンとならすと、瞬時にしてARアーマーが装着された。そのアーマーはフィギュアハンターでも見かける両腕にレーザーキャノン、SF系と北欧神話を足したようなデザイン、特殊なデュアルアイが特徴のバイザーメット――。
「まさか――フィギュアハンターはARゲームだったのか?」
雪風のアーマー装着のシークエンス、それはARゲームにおけるARアーマー装着と一致している。つまり、今回のフィギュアハンターは異能力者同士のバトルではなく、ARゲームとしての拡張現実世界だったのだ。
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