序章5

 その日の午後2時、つぶやきサイト上ではフィギュアハンターの話題が上がっているのだが――。

【やはり、島風が強い印象だな】

【それよりも、大和や武蔵、長門もスコア的にトップランカーに近いだろう】

【本命は更に違う人物だ。自分は加賀だと思うね】

【加賀は確かにフィギュアを手に入れたが最後、周囲の雑魚は相手にならないレベルだ】

【過去のフィギュアハンターは異能力をガチで持っているような連中もいたが――】

【今のARゲームシステムを導入した方は気に入らないと?】

【そうではない。単純な事を言えば、夢小説勢が人気のなくなったジャンルから旬ジャンルへ移動するのと同じ事が――と言う事だ】

 さまざまな意見がつぶやきサイトでつぶやかれているのだが、その中には――。

【結局、フィギュアハンターも超有名アイドルには勝てないか?】

【ARゲームでも芸能事務所のゴリ押しアイドルによるタイアップが水面下で進められているらしいが】

【それだけじゃない。ソーシャルゲーム等でも超有名アイドルのコラボが準備中と聞いた】

【その噂こそ、炎上誘導のまとめサイトによる陰謀だろう。公式からのソースがない限りは、そのような噂を信じる必要性がない】

【炎上誘導のまとめサイトにはアフィリエイトで一山儲けようと言う考えで、超有名アイドルの芸能事務所2社と手を組んでいる噂も――】

 ある書き込みに関しては途中から読めなくなるという状態だったが、これは検閲が入った訳ではないようだ。その理由は誰も分からない。噂によると、特定芸能事務所を炎上させようと言う書き込みをアイドルファンが通報していると言う話だ。

 そうしたファンが超有名アイドルに依存するレベルは常識が通じないほどであり、噂では1人で1兆円を投資したファンもいるらしい。1兆円が1年の通算で投資したのか、1日での投資額なのかは不明だが――1日だとすれば、相当な事件になるのは間違いないだろう。



 この書き込みをタブレット端末で確認している人物がいた。それは、コンビニの店前にあるフードコートスペースでドーナツを食べている女性――島風(しまかぜ)あいかである。

 服装は戦闘時とは大きく異なる――と思われたが、戦闘時のコスプレのままである。武器類は装備していないので、店内に入っても特に警戒はされない。店側もフィギュアハンターに関しては敵意を向けている客もいる事に入るが、下手に騒動を起こせば自分達が捕まると考えていた。ハンター側も下手に危害を加えないで欲しいとホームページ上で告知をしている。

 しかし、ない事が次々と超有名アイドル投資家を名乗るファンに拡散された結果が――現状のフィギュアハンターが置かれている立ち位置だった。

「結局、どの時代でもアイドルファンが迷惑行為を起こし、それを他のファンによる仕業と責任転嫁する――一番もうかっている事務所が、この行為を行って無罪という顔でいるのも――」

 ドーナツを右手で持っているが、タブレット端末はテーブルの上に置き、左手でフリックをして情報収集をしている。手先が器用と言う訳ではなく、端末を汚したくないという事情が存在していた。



 県内某所にある漫画喫茶、そこのインターネットに接続可能な個室がある。飲み物や食べ物で散らかっている訳でも、雑誌類が山積みと言う訳ではない。この人物が使用しているスペースは、タブレット端末としても使用出来るARガジェットが机に置かれているだけだ。それ以外にもタンブラーに入った小―ピーも置かれているが、アイスコーヒーらしく、湯気は出ていない。

「なるほど。今回はこれにするか」

 身長170位に黒髪のセミショートヘアという男性が、タブレット端末に表示されたショッピングサイトの商品ページをブックマークする。

【今回のターゲットは――】

 その後、ログインしていたつぶやきサイトに商品紹介ページのURLをコピペ、何かを拡散しているような行動をとる。

「フィギュアハンターの復活、まずは歓迎をしておくか。こちらとしては、張り合いのない相手は勝負以前の問題となる」

 彼がシャドウと判明するのは、これよりも先の話となるが――。

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