第8話
瑞々しく潤い、重なっているとまるでもともとひとつであるかのように見える厚い唇が。
本来食物や空気、水分という生きるために必要なものを取り込み。
排気や言葉という生きるために必要なものを取り出すための。
その、どこまでも生きるためだけのその場所が。
僕の命令によって、穢れた欲望を受け入れるためだけにぬらり、と、裂ける。
それだけのことでふるっ、と弾む唇がほんのわずかな糸を引き、途切れる様はあまりにも
誘われるように覗き込めば、彼女の赤々とした舌が息をするように蠢いている。
白く輝く純潔の牙城が僕という異物を阻むことはもうできない。
彼女の中はどろどろの唾液に満ち、このまま僕の欲望を受け入れてしまえるほどにぬめっていた。
彼女の空虚な視線が僕を見ている。だが僕の欲望はもう堪えられなかった。理性などすでに蒸発している。彼女の肉の洞はあまりにも淫猥に僕を誘っていた。
生唾を呑み、僕は自分のスカートに手をかける。
取り出したそれはまるで僕の欲望が集結するように熱くなっている。
僕はそれをどろどろと煮え立つ彼女の口腔に差し向けた。
今から僕はこれを侵すのだ。
そう思うだけで背筋が震える。頬が焼け落ちそうだ。きっと彼女から与えられる感覚はあまりにも甘美だから、どのみち頬は蕩け落ちてしまうに違いない。
催眠アプリが僕をそうさせたのだろうか。
それとも僕が最初から、こうして抵抗の出来ない相手を性のはけ口にすることを喜悦する凶悪な犯罪者だったのだろうか。
そんな思考は、ごうごうと燃え盛る欲望にあっさりと焼き尽くされた。
僕は震えながら、狙いをたがわぬようにと慎重に、慎重に。
近付くたびに荒くなる呼吸に視界を眩ませながら、そして、ついに。
ついに、ああ、ついに僕は、取り返しのつかない欲望を突き立てた!
その瞬間、僕の視界で閃光が瞬いた。
灰の塊となった理性が地獄の地面に弾ける音がした。
僕の思考は真っ白に染まっていた。
脳を席巻する圧倒的な興奮が僕の心臓を弾ませる。
呼吸が苦しい。
それなのに僕はなんども、なんども、なんども繰り返し欲望を突き立て続けた。
僕は半ば発狂していた。動きを止めることなど考えられなかった。
わずかに角度を変え、深さを変え、幾度となく彼女の肉を汚す。
ああ、ああ、見ろ、彼女の口の端からこぼれ落ちる雫のなんと美しいことだろう。芸術的なエロティシズムとそれを侵す背徳が僕のタガを次々に外していく。
僕はケダモノだった。罪過と彼女の美に飢える醜悪なケダモノだ。
僕の欲望は口腔に収まることをよしとしなかった。
制服という限られたときにだけ許せる純情の衣を纏った彼女の、たわわに青春を実らせるその身体はどこもかしこも美しかった。
何度も何度も尽きた。打ち止めになるまで繰り返した。
ついに全てが終わったころには、もう、一時間近くが経過していただろうか。
僕は自分の手中に堕ちた彼女のいやらしい姿をまじまじと堪能し。
―――そして、スマホをスカートのポケットにしまった。
傍らの机に置かれたいっぱいになったSDカードを丁寧に回収していく。
その後改めて彼女の口腔を堪能すると、肌に触れないように注意をしながら唾液を拭き取った。
そのティッシュを持ち帰ってしまえと悪魔が囁いたが、それは結局できなかった。
もう、十分だった。これ以上を求め始めたら、それこそお終いだ。
今でも大量の後悔がある。今すぐにでもこの首を切り落としたい。
それなのに、僕は充足していた。
彼女の生写真という黄金でさえ霞むような宝物をこんなにもたくさん手に入れたのだ。
僕はすぐに家に帰って、一夜かけてPCへとデータを移した。長らく使い古してきたスマホがすぐに熱を持つのが少し不安で、一刻も早く終えてしまいたかった。せっかくのデータが消失してはかなわない。
わざわざそのために妹を催眠して先に入眠させることに躊躇いがないのが、おぞましかった。
僕は、もう、怪物に成り果てているのだ。
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