魔女と警官2

 俺は、とある噂の調査のために灰の街に駆り出されたのだった。


「こちらです。我々はツアーガイドをやっているんです」

 

 女に案内されたのは、いまどき木造の、水道はともかく電気はどうかという建物の中だった。

 ガラス窓に手を付けると、かたりと動いた。指紋を慌てて柔らかくなったコートの袖で拭う。

 ーー早く噂の真偽を確かめよう。


「あの。営業許可は取られてます?」

「とってませんよ。ボランティーアですから」

「流ちょうな発音ですな」

 ……観光案内でボランティアなどあるだろうか?

 そして、案内するとしたら、この街の隣の「ゴミ捨て場」だろうかと予測した。


 「ゴミ捨て場」。確か、この街が灰の街になった、主な原因の一つだった。


「大丈夫。何とかなってます」

 心を読まれたようで、はっとしてそっちに目をやったが、女はそこにはいなかった。

 女は俺の肩越しに、

「みんな気にされるので」

 と淑やかに言って、ゆっくりと扉のほうに歩いてゆく。


 何となく、俺は女の後をついていった。


「あれ。ついてきてくれたんですか」

 女は少し驚いたようだった。

「ええまあ」

「うふふ」

 ちょっとてれた。


 女はそのまま、いつもの「ツアーガイド」をやってくれるそうだった。


 ーー灰の街の「魔女」に関する噂は、もう一つあった。

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