ただの短編集

HUDi

少年と少女

一人の少女が、孤児院から逃げ出した。

少女は灰色の壁に背中を持たせかけて、膝に顔を埋めていた。

そこに黒髪の少年が通りかかる。

「ここは危ないよ。もうじきパレードが通る」

すると少女は「あっち行って」と、砂を一掴み少年の足に投げかけた。

「何すんだよ」

少年が非難する。少女は動かない。

少女の髪は埃を被って濃褐色をしている。少年はそれに気づき、彼女の髪を払ってみた。

「何するの!」

すると、その下から炎の色が現れた。

「うわ。きれい」

少年は飛び退りながら思わず言ったが、少女はまだ顔を見せてくれない。

「ねえ。ずっとここにいるつもりなの」

少年は少女の傍らに座り込んだが、まだ少女は黙ったままだ。

「ねえ。一緒にあっちに行こう」

少年が少女の手をつかみ、体重をかけて引っ張った。

「パレードなんて怖くないわ!バクゲキに比べたら」

そうは言ったが、少女は少年の思い切りに負けて立ち上がってしまった。

目を開けると同時に、埃の拭われた肌の下から、緑色の瞳が露になった。

「わあ。すてきだね」

「みんな言うわ。なんで緑の目がいいの?」

「大人たちが良いって言ってるから」

「つまんない」

「でも僕も好きかも」

「ありがとう」

こんなに汚いのに、と少女は言って、互いに取り合った両手を見た。

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