第86話 『メーテル』と松本零士ヒロイン

くろねこ教授です。


前回『999』の映画だけでほとんど終わってしまった。

今回はメーテルの話。


魔女!

である。


なんの力も持たない子供だった鉄郎に銀河鉄道の永久パスを渡し、星の海への旅路を開く謎の女。

細い体と長い睫毛、おっそろしいまでに美しく繊細な外見の美女。

なにかと攫われたりして、鉄郎が戦士の銃持って助けに行く。

ところが。

助けに行った鉄郎が返り討ちにあって、気を失ったりすると。

敵をその目で見つめる。

相手は震えだすのである。

「悪かった。俺が悪かった。知らなかったんだよ。アンタがそんな…………」

謎に包まれた危険な女性。

在る時は傷ついた鉄郎を抱きしめ、一緒にお風呂に入ったりする。

理想の年上お姉さん的ヒロイン。


その正体は…………

ネタバレ上等なので、ネタバレ嫌いな人はここから読まないように。


機械帝国の女王プロメシュームの娘!

である。

母のため、機械の体になりたい人間を連れて来ては機械化母星のパーツ、歯車やネジとして捧げて来た魔性の女である。


しかし、鉄郎が機械の体にされそうになった時、母を裏切る。

彼女は最初から父親ドクターバンとともに計画していたのだ。

機械帝国に反旗を翻す強い心を持った男達を母星の重要なパーツに送り込んでいた。

この時に彼らが機械帝国を裏切り、機械化母星は粉々になる。


そして鉄郎は999で脱出し、メーテルは自分の体を取り戻すため別れる。

彼女の本当の体は不明である。


劇場アニメでは鉄郎の母をモデルとして作られた肉体と言われていたが。

原作マンガでは、外見をその様に見せかけてるだけ、でその実体は……と言う場面が何度か出て来る。


なんとなく良い人の様な気もするが。

考えてみるとオッソロシイ。

今まで鉄郎と同じ様な少年達を何人も騙して、ネジにしては惑星のパーツにして来たのである。

最後には彼らごと惑星を破壊に追い込んでるのだ。

ヤバすぎる事この上無い魔性である。


鉄郎が助かったのは。

劇場アニメでは彼女が鉄郎に本当に惹かれたから、と言っていたが。

原作マンガではむしろ、そろそろ母親に反旗を翻す準備が整った、そのタイミングで鉄郎が来た、フンイキである。

だからタイミングが違えば、鉄郎だってネジにされて、そのまま星に置き去りにされたのだ。

そしてメーテルは次の少年を騙して連れて来る。

デンジャラスビューティーである。


松本ヒロインはか弱そうな繊細な美し過ぎる美女でありながら、実は恐ろしい魔女であったりする。


『1000年女王』の雪野弥生にしても。

最初は主人公のピンチを助け出す謎のヒロインだったり。

ラーメン屋の看板娘だったりしたのだが。

実は人知れず地球を治めて来た女王だったりしたのである。

その名もラー・アンドロメダ・プロメシューム。


ちなみに『1000年女王』は好き。

なんとゆーか色々クレイジー。

新たな1000年女王がやってきて、地球に居た1000年女王と決闘して。

勝った方が真の1000年女王になるとか。

もうナニをゆーてるのかサッパリ分からない。

THEレイジー松本センス爆発である。



『QUEENエメラルダス』のエメラルダスは最初から強い恐ろしい魔女だったな。

このマンガ、残念な事に4巻、話の途中で終わっている。

少年・海野広が既に宇宙海賊として有名なエメラルダスと出会い、徐々に成長していく。

時に助けてくれる女性であり、時には敵の様であるエメラルダスが魅力的に描かれたマンガだったのだ。

途中からエメラルダスの回想が始まり、見事になんの区切りも無く終わってしまっている。

これこそ、別マンガ家の作画で続きやって欲しーよ。


『わが青春のアルカディア』で地球連邦のオエライさんを非難するシーンは相当にカッコ良かった。

あの作品も物語のキーマンはトチローでもハーロックでも無く。

マーヤであった。

たおやかな見た目のヒロインでありながら、不屈の精神で地球人を勇気づけ続けた女英雄。


ちなみに『エメラルダス』のOVAはデキの良い作品なので、是非見て欲しい。

作った会社がメジャーなレコード会社でなく、あまり流通していない。

レンタルにも出ていないし、ネット配信も少ない。

見かけたら、1、2話は見ておいて損は無い。

3、4話は……何故かスタッフが総入れ替えになって少しデキが落ちてしまう。



そいでもってなんでだか、後から松本先生により色んな設定付け加わって。


雪野弥生=メーテルの母、プロメシューム。

エメラルダス=メーテルの姉。


とゆー事になってしまった。

このマンガではそーゆーコト。

この映画ではそーゆー設定。

みたいに作品ごとに割り切ってるならいーのだが。

なんかそれが全ての作品通しての公式設定と言う扱いになっちゃったらしいんだよな。


エメラルダス=メーテルの姉はまだ許せるとしても。

雪野弥生=メーテルの母はムリが在ると思うんだよな。


OVA『メーテルレジェンド』でその辺語られたりしてるんだけど。

ファンとしてはあまり納得感ある気がしない。


エメラルダスが姉とゆーのは、なんとなく分かる。

マンガ版ではライバルとかゆーてた気もするが。


『QUEENエメラルダス』が連載されたのが1978年から1979年。

『銀河鉄道999』が連載されたのは1977年から1981年。

スタートこそ『エメラルダス』の方が遅いが。

『999』の方が長く描かれた。

『エメラルダス』のテイスト、宇宙に旅立った少年をミステリアスな美女が導くと言うストーリーはそのまま『999』に吸収されたのだと思う。

そんな意味で『エメラルダス』が『999』をメーテルを方向づけた姉作品なのだ。


にしてもこの松本零士の、頑張る少年が一応主役だけれども最後はヒロインの方が持って行く、とゆースタイル。

男性マンガ家の書くマンガとしてはかなり珍しいんでないかい。


くろねこ教授としては、そんなヒロインが相当好きなのである。


だからメーテルも好き。

魔女でも良いのである。

むしろ魔女なトコロが魅力的なのである。


『ミステリーイブ』も良かった。

もっとアカラサマにヒロインが魔女だった。

どんな姿にもなれる魔女。

主人公の前では魅力的な美女だが、それは仮の姿。

実際の姿は分からないのである。

夜は主人公のリクエストに応えて、人気のアイドルや女優の姿になったりする。

悪夢の様な、夢の存在。


とゆーワケで、松本零士世界の中で女性は繊細で美しくも、強大で危険な存在と言う話でした。


くろねこ教授も単に男に都合よいヒロインじゃなくて、そんな裏を持つ女性キャラを魅力的に書きたいよな。


ではでは。

松本零士先生のご冥福をお祈りします。

ありがとうございました。


くろねこ教授でした。

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