第63話 『海のトリトン』とか
そんなこんなで。
くろねこ教授です。
今回のお題。
『海のトリトン』
原作漫画:手塚治虫(神)
TVアニメ:1972年4月1日~9月30日放送。
アニメから丁度50年とゆーコトで少しニュースになったりしていたのを見かけたので。
今回は『海のトリトン』に関して。
手塚治虫(神)の連載漫画『青いトリトン』
少年矢崎和也は不思議な赤ん坊を拾う。あの赤ん坊こそは海棲人トリトン族の末裔。
和也の弟として育てられたトリトン。人間界に馴染めないトリトンや父親を亡くした母と和也の試練などが描かれる。やがてトリトンは金色のイルカ・ルカーと出会い、トリトン族を根絶やしにしたポセイドン族と戦うため海へ旅立つ。
トリトンの冒険を中心としながらも、その後の和也の話も語られW主人公的に話は展開される。
トリトンはトリトン族の少女ピピと出会い、ポセイドンの首領がピピに横恋慕して妃にしようとしたり、結局ピピとトリトンの間に子供が産まれたり。
色々あるのだが。
ポセイドンは海を汚す人間こそが真の敵として、トリトンに人間との戦いに力を貸すよう迫ったり、人間に育てられたトリトンは一度はそれを断るが。
子供を見世物にしようとする人間に攫われ、結局力を貸すことになったり。
大分複雑な物語である。
アニメ化に際して人間側の物語や兄の話はバッサリカット。
トリトンくんの海でのファンタジー冒険譚に変更される。
手塚治虫(神)はそれまで自身のアニメ化に必ず関わってきたのだが。
虫プロの倒産があって、このアニメには一切関係していない。
そいでアニメの監督に抜擢されたのが虫プロ出身の富野由悠季。
これがトミノ初監督作品となる。
自分は何歳ころ見たのかな。
本放送ではトーゼン無い。
CSかなんかかな。
小学生の頃見て、社会人になって見返した。
善悪逆転の衝撃のラストと持ち上げられる事の多い本作。
最終話。
ポセイドンの本拠地に乗り込んだトリトンは
ポセイドン族はアトランティスによって生贄とされた人々の生き残りで。
アトランティスの末裔がトリトン族。
ポセイドン族がトリトン族を殺戮してきたのは、自らの身を護るためだった。
とゆー事実を知る。
「実はトリトン族こそが悪であり、ポセイドン族が善であった」とゆー訳だ。
でもどうだろう。
そんなに衝撃だったかぁ?
原作でもすでにトリトンが絶対良いもんな訳では無い要素は入ってるし。
むしろ漫画版のトリトンに手を組んで人間と闘おう言い出すポセイドンの提案の方がよっぽど衝撃な気もする。
テレビアニメと言う意味でもアトムなんかで既に主役が絶対正義とは限らない話はやっている。
この場合最終回までそんな話だと匂わさずに進んでのラスト、とゆー意味では衝撃かも。
視聴者を騙している。
これに関してトミノ監督は後年、周りに相談したら絶対却下される、ので隠して確信犯的にやった「職権乱用です」と言っている。
視聴者どころか、周りのスタッフまで騙していたワケだ。
周囲を騙してまで、作品に子供向けテレビアニメじゃないプラスアルファを込める。
このトミノ監督の姿勢が後に『ガンダム』を成立させる事になる。
スポンサーを騙し、スタッフにも全容は明かさなかった。
『ガンダム』の一話目を見たスポンサーからの文句は激しかったらしい。
一話見ただけで分かったのであろう。
玩具を売るためのアニメになっていない。
スタッフで言えば、一時期安彦良和さんは言っていた。
「『ニュータイプ』なんて言葉が出てくるのは知らなかった。知っていたら反対してたと思う。人間はどこまでいっても人間ですから」
手元にインタヴュー記事が無く正確ではないが、その様な趣旨の事を発言していた。
と言いつつ、後に安彦版『ガンダム オリジン』書く時にはニュータイプ使っているのである程度は容認したのであろう。
まー、そんな訳でこのトミノ監督の行動力が当時のアニメ制作現場からはなかなか有りえなかった作品『ガンダム』を産み出した。
手塚治虫(神)先生はこのアニメに関して良いとも悪いとも言っていない。
ただし、連載時『青いトリトン』とゆータイトルで有ったマンガを単行本にまとめる際に、
アニメから逆輸入のタイトル『海のトリトン』とする事を了承したのだから、認めてはいた筈だ。
オープニング曲がやたらカッコ良い。
イントロが流れて爆発した岩からタイトルが揃うシーンはすげぇイカす。
未だに甲子園なんかの応援楽曲に良く使用されていて、聞いたら、ああこれか、と誰でも分かるだろう。
イルカの背に乗って戦う少年。
その手に持っているのは小剣。
「オリハルコォーン!」
とトリトンが叫ぶと、それに応えるように光ってくれたりする。
ときめくファンタジーのカタマリである。
敵側のタツノオトシゴが怖ぇー。
小さい身体なのだが、瞬間移動しながら毒矢吹いたりする。
失敗した敵ボスを処刑するのである。
子供心にも、コイツらでトリトン殺せば中ボスみたいなヤツら要らないやん、と思ったモノだ。
トリトンくんは……ある程度大人になってみると、ホントに可愛くない。
ヒネたガキっぽさ全開なのだ。
その後のカミーユくんに繋がるようなイラ立つキャラ。
年齢的にも子供なので、それもまぁ可愛いと思う人もいるかも。
実際女性マンガ家や女性アニメーターにはトリトン大好きと言ってる方が少なくない。
ヒロインのピピも割とワガママキャラで二人して衝突する。
ラブコメちっく王道やね。
て、事で最終回。
衝撃の真実を知ったトリトンくんは自分の胸だけに秘めておく事を決意する。
「……この事はピピやルカーには黙っていよう」
少年は『見て見ぬフリ』を覚えた。
大人になった瞬間である。
くろねこ教授はホントに感動した。
ああ、あの周囲に気を使うコトを知らなかったワガママなガキンチョがここまで成長したか。
やるな、トリトン。
とゆー訳でアニメ『海のトリトン』は。
くろねこ教授にとっては、少年が『見て見ぬフリ』を覚える作品なのだ。
テレビアニメでこんなに子供がリアルな成長を遂げる作品はなかなか無いだろう。
素晴らしい!
あくまで……くろねこ教授の個人的感想ですので。
ではでは。
くろねこ教授でした。
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