第54話 くろねこ教授的『笑い』の小説 後編

さて、前編では小松左京(大)先生と筒井康隆(鬼)先生の話で終わってしまった。

まだ書きたい事イロイロあるのに。


んで次は平井和正(宗教)先生、横田順彌(ヨコジュン)先生の話をしよう。

そこから火浦功先生、そして神坂一先生に触れようかしら。


平井和正先生。

以前も触れたがくろねこ教授は若い頃、熱狂的な信者だった。

『アダルトウルフガイ』の一人称語りも面白い。

これぞソフトボイルド。

『ウルフガイシリーズ』のセルフパロディ短編も書いていてこれも面白いのだけど、今回はパス。


『超革命的中学生集団』

作者がハチャハチャ小説と銘打った作品。

永井豪先生によるイラストが着いていた事も含めて、日本におけるライトノベルの第一号と呼ばれていたりもする。

実在の人物をそのままキャラとして取り込んでいて、俺こと横田順彌くんの一人称語りがとにかく面白い。

主役たちは宇宙人エックスによって超人的体力の持ち主になったりマッドサイエンティストになったり特殊な力に目ざめる。

けどまー全員ワガママな中学生。

なんせ自分の事しか考えない。

主役がカッコ悪いのが良いカンジで、だけど最後の見せ場は主役が持っていったりするのがステキ。


その流れを受けたのかなんなのか良く分からないのだけど。

横田順彌先生の初期ナンセンス小説。

この辺もハチャハチャ小説と銘打っている。

パロディー的なSFネタを中心に下ネタや地口的ギャグが多数取り込まれ最後には決め台詞で終わる。

奇絶! 怪絶! また壮絶!!


SFファングループにいた横田順彌先生と平井和正先生が親交があって、その名を『超革命的中学生集団』に丸っと使ったらしい。他のキャラクターもほぼ同様にそのグループの人間から使われている。


この辺までは70年代から80年代前半。

80年代中半になると火浦功先生が現れる。



火浦功先生。

カクヨムで書いてる方なんかのエッセイを見ても「火浦功すげー!」言うてる方は割といらっしゃる。

初期ライトノベルの代表みたいな位置になってる作家さんと言えるかもしれない。

それまでのギャグ小説と一歩隔絶したところにいる感。

分かり易い点は下ネタや下品なネタをほぼ使わない点であろう。

オシッコちびった、とか、ウンコ我慢する、みたいなネタ。

美女を見て分かり易く主役が鼻の下伸ばしたり。

そーゆーのを極力排除している。

なんとゆーか、時代は『ドリフターズ』じゃねーんだよ、みたいなカンジであろうか。

その替わりマンガアニメ、テレビ番組のお約束的パロディをふんだんに散りばめているのだ。


そして文章。

文章がとにかく洗練されていくのだ。

『みのりちゃんシリーズ』なんか読むともう明らか。

シリーズ1巻『日曜日には宇宙人とお茶を』1984年、火浦先生としては初期作品と言えるだろう。

それから3年『大冒険はおべんと持って』になるともう文章が、話の構成が全く違うのだ。

書かない事で想像させるオチ。

行間の間合いがスゴイのだ。

これに関しては説明しようと思うと、文章丸々引き写すしか無いのでこの程度にとどめる。

笑わせる小説、ってかっこいーよな、と思う方は是非目を通して欲しい。

もうとっくに読んでるって、あたりまえだろ、って。

そりゃまた失礼しました。

その後、あまりにも文章が完成され過ぎたせいか、恐ろしく遅筆な作家として有名になっていく。

知名度の高い『未来放浪ガルディーン』なんか1986年に1巻が出て、KADOKAWAやスニーカーが猛プッシュで売り出したにも関わらず、最後の巻『大豪快』外伝も含めて5冊目が出るのが2000年。

14年間で5冊である。

スニーカー誌の表紙を飾ったり、新刊出るぞ出るぞ! と何度も宣伝しながらである。

作家によっては1年で書いちゃうような冊数である。

火浦功の新刊マダー? と言われつつ2000年以降まともな新刊は出ていない。

合本や焼き直しのみ。

とゆー訳で新刊を待ち望んでいるくろねこ教授なのである。




さて最後に神坂一先生にも触れておこう。

代表作は言わずと知れた『スレイヤーズ』である。

アニメ化、映画化、ゲーム化と何度もメディア化されており、90年代以降のラノベ系ファンタジーに大きな影響を与えている作品。


もちろん知ってますけどなにか、と言う方も多いだろう。

『スレイヤーズ』の凄さと言うモノはおそらく色んな方が語ってるのだろう。

あまりくろねこ教授はその手の文章を読んでないので、どう評価されてるのか、良く分かって無いのだが。


これはアクマでいい加減なくろの勝手な意見なのだが。

今まで触れて来た『笑い』の小説の流れ。

小松左京(大)先生、筒井康隆(鬼)先生、平井和正(宗教)先生、横田順彌(ヨコジュン)先生と言うのはドタバタの笑い、軽い下ネタの笑いで、オヤジギャグで、ベタなメタフィクション楽屋オチであった。

言って見ればドリフターズ的な笑いである。

そこを一歩抜け出したのが火浦功先生。

下ネタやドタバタを排除し、『間』による笑いを追求した。

これは本人が落語好きと言った辺りにも関係あるかもしれない。

そこに神坂一先生が持ち込んだ物は『ツッコミ』の重要さであると思う。

変った人が変な事をする『ボケ』だけが面白いのでは無い。

そこに的確なツッコミがあるから面白さが増す。

そう言う部分を意図的に明確に書いておられたのだ。

そんなんアタリマエじゃん、という話もあるだろう。

でも神坂一先生以前の笑わせる小説にはその重要性が理解されてる作品は少なかった様に思うのだ。

神坂一先生が関西出身とゆー辺りや、漫才ブームの後と言うあたりも関係しているかもしれない。

火浦功先生の場合は『リアクション』芸と言うか、ベタなツッコミの出来ないモノを目指してたように思う。


とゆー訳でリナ・インバースは初期、マイペースで自分勝手な型破り魔法使い少女でありつつ、更に変なキャラが出て来ると軽快なツッコミ役として活躍する事になる。

キャラたちのボケツッコミによって、物語をテンポ良く進めていく快作として出来上がっていく。


そこでくろねこ教授も今回『異世界転生ファミリー』では『ツッコミ』の方に少し力を入れて見た。

芸人の進歩と言うモノは凄まじく、ツッコミの方が独特で面白い、みたいな『笑い』も世の中には多数出てきている。

そんな事を考えつつチャレンジしてみたのだが……

ああっ、コレ最終的に自作の宣伝じゃん。

いや、別にそんなつもりで書いていた訳では無いんですよ!

ホントですよ!

ホントですってば。


まあそんな訳で『笑い』の小説の話でした。

くろねこ教授は……シリアスでスタイリッシュな作品よりも、何処か笑いの要素も入ってる作品の方をよりカッコ良いと思っている節がある。

小説でも、マンガでも、映画でも、舞台でも全てにおいて。


その後のラノベの『笑い』の流れはくろねこ教授も良く分かって無い。

いやちょこちょこと目を通してもいるのだけど、あまりに数多すぎるし。

『ゲーマーズ』なんかはリアクションネタと言うか、ギャグを一歩前進させようと思っている感が感じられたように思う。

その他、そーゆー話の流れならコレ目を通すべき、とゆー作品あったら教えてね。


ではでは

くろねこ教授でした。

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