第37話 小説『天海の秘宝』と夢枕獏先生

くろねこ教授です。


本日は調子に乗って連続投稿。

今日は小説投稿しないからその分ね。


夢枕獏先生 『天海の秘宝』読み終えました。

別に新作でも無く 2010年に出版されてるのだけど。

買ってあって読んでいなかったのです。


夢枕獏先生は好き。

『幻獣少年キマイラ』からのキマイラシリーズ。

『魔獣狩り』からのサイコダイバーシリーズ。

『闇狩り師』からの九十九乱蔵シリーズ。

『餓狼伝』を始めとした格闘技モノ。

『大帝の剣』みたいな時代モノ。


小中学生の頃から読んでいて自分の血となり肉となっていると思う。

なんというか、グイグイと勢いのある文章が魅力なのだけど。

最近では少しお年を召してしまった感もある。


『大帝の剣』という作品があって。

阿部寛さん主演で映画化されてるので知ってる人も多いかな。


舞台は戦国、主人公は万源九郎、どうも持っている大剣はアレキサンダー大王のモノらしい。

そこに忍者やら侍、宇宙人まで絡んで来る荒唐無稽活劇。


これが1990年頃KADOKAWA様の雑誌『野生時代』で連載されていたのです。

ところが『野生時代』が廃刊。

10年以上経って、エンターブレイン様『週間ファミ通』で連載再開。

この作品を読むと作風の変化は明らか。

10年以上経ってるから変わって当然と言えば当然。

でも自分が好きだったのは昔の方なんだよね。


宮本武蔵が登場してくる2巻(昔の角川ノベルズ版での2巻)

作者の筆が走ってるのが明らかに伝わる。

走ってるとゆーか、もう暴走してる。

主役のライバルキャラ、全体を通すとそこまで重要な役どころでは無い武蔵。

なんだけど一冊の半分以上、武蔵の武勇伝で埋められてて。

宮本武蔵を書き出しちゃったら止まらない。

そんな夢枕獏先生の心の勢いがそのまま伝わってくる。


いろいろ内容も凄いのだけど、それは興味ある人は目を通してねと言う事で。

その角川ノベルズ版2巻の後書きがすげーオモシロかったのだ。

獏先生は『大帝の剣』で宮本武蔵や佐々木小次郎を登場させるか悩んでいたと言う。

そこまで登場させると話の収拾がつかないんじゃないか、と

ところが知人に言われる。

収拾なんて気にしちゃいかんのです。

過去の面白かったと言われる名作たち、それも収拾なんてついちゃいない。

そう言われて獏先生は、目からウロコが落ちた。

また別のウロコが飛び込んだのかもしれないが。

↑これも獏先生が書いてるんですよ。

くろねこ教授のツッコミじゃありません。


この後書きと2巻の本分を合わせて読むとタイヘンおもしろい。

まだ主役の万源九郎がどんなヤツであるのかもハッキリしてないのに。

宮本武蔵を書きたいから書いちゃうんじゃー。

そういう勢いが如実に出ているのだ。


ところが後年のファミ通連載版になってくるとその疾走感が失われている。

特にラストの方は、なにやら、タダのあらすじと説明だけみたいになってしまう。

獏先生がお年を召したと言うだけでも無くて。

途中で映画化されてその公開も終わったとか。

小説の週間連載、それもナゼファミ通?とか。

他にも多数、書いている小説シリーズが有る等。

色々な理由は有ると思うのですが、やっぱり昔ときめいていた人間としては残念なのです。


んで

『天海の秘宝』

これも『大帝の剣』に近い世界観の作品。

宮本武蔵なんかも出て来たりして。

『不知火の一味』なんて盗賊たちが出て来たりして、残酷アクションはバリバリ。

巨大な鋏を使って首を斬るシーンなんかも印象強い。

敵に比べて主人公の印象が弱いかな。

発明家風の吉右衛門。

他の登場人物として出て来た人々。

それがラストには実は『不知火の一味』であった、みたいな叙述トリック風のテイストも加わる。

副主役、剣士の病葉十三、わくらばじゅうぞう、名前がカッコいいよな。

江戸の街に宮本武蔵と名乗る辻斬りが現れたと言う。

最後にはSF的、タイムトリップネタで終わる。


宮本武蔵が機械の身体で、斬られた機械の身体から電流が走る。

なんてシーンは『黒の獅子』を思い起こさせるね。

誰も知らないか。

永井豪先生の時代劇、忍者モノのように思わせて徐々にSFタイムトリップネタに持って行くマンガです。

『ターミネーター』の元ネタと言われたりもしているらしい。


『天海の秘宝』は『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵なんかもチラリと登場したりして、イロイロ面白いトコロは有るのだけど。

これも何だか、後半説明ばっかり駆け足で終わってしまうのだよな。


病葉十三とか長谷川平蔵とかもう少し活躍してもいいのに。

何故か敵キャラ鋏を使う平吉ばかり目立ってる。

それならそれで平吉にスポット当ててわーっと『大帝の剣』の宮本武蔵のように書いちゃうとかして欲しかった気が。


そんなこんなで。

まとめとしては小説って、小説だけじゃなくマンガ、映画、物語全て。

全体のバランスや収拾も大事だけど、それをぶっ壊す勢いも重要だよな。

と言うコトで。


ではでは。

くろねこ教授でした。

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