第34話 コミック『ばるぼら』

どーも。

くろねこ教授です。


2021年大晦日、皆さま如何お過ごしでしょうか。

おいらは年末年始をダラっと楽しんでます。

と言いつつ、自作小説書いたり、テレビ見たり、買い出し行ったり大掃除したり、なんやかやと忙しいカンジ。


さて今回のお題は『ばるぼら』。

2019年には手塚眞監督、ヒロインに二階堂ふみで実写映画化されたりもしたらしいんですが未鑑賞。

その組み合わせだとさすがにちょっと観たくなる。

いつか観たらまた感想書きませう。


永井豪先生が先日、なぜか『永井豪版 ばるぼら』を出したので。

永井豪先生版を少し紹介しつつ、本家手塚治虫(神)先生版について語りましょうかと。


『永井豪版 ばるぼら』はそんなに永井先生らしさも無く、手塚先生の原本をリライトしたような雰囲気。

特に一話目はそのまま。

二話、三話と続くウチ、徐々にヤクザの抗争が絡んだり、少しづつ原典とは違う物へ。

やはり女性ヌードの魅力では手塚先生に勝ってるかもしれないな。

でも、あの原典の危険な香り、背徳的な大人の雰囲気には勝てないな。



さて原典。

手塚治虫(神)先生の『ばるぼら』。

発表は1973年。


トーゼン、リアルタイムで読める筈も無く、自分が読んだのは幾つくらいの時だろう。

小学校高学年か、中学生。

その大人の雰囲気に打ちのめされました。

ヒロイン、ばるぼらはフーテン、いわゆるホームレスです。

出だしはこんなカンジ。


都会が何千万という人間をのみ込んで消化し……

たれ流した排泄物のような女―それがバルボラ


耽美主義の天才と呼ばれた作家、美倉洋介は彼女を拾いマンションへ連れ帰る。


駅の片隅で寝っ転がった彼女はヴェルレーヌの詩なんかを呟いていて。

美倉もそれに返したりする。

ばるぼらを気にしながらも、

美倉はデパートで出会った女性と恋に墜ちる。

女性を連れ帰り愛を囁く美倉。

その身体をベットで抱きしめる。

ところがそこにばるぼらが乱入する。

酒瓶で女性を殴りつけ、その肢体をバラバラにする。

なんというコトか、美倉が愛した女性はマネキン人形だったのだ。


一話だけでは美倉がおかしいのか、

それともマネキンが何か特殊能力で彼を騙したのか、

ばるぼらが何者なのか、

全てが良く分からない物語。

その後も犬を愛しい女と思い込みベットに連れ込む美倉のシーンによって、

徐々に美倉が異常なのだと言う事実と、

ばるぼらもまた異質な存在だと明らかになって来る。



何と言うか、耽美主義と言うか、背徳的な色付けがガッツリされた大人のマンガである。

美倉はアタマおかしいし、獣姦だし、その後も近親相姦が出て来たり、やりたい放題。


芸術に振り回される美倉と芸術なんかに意味は無いというばるぼらの様にも読めるし。

芸術そのもの、或いは芸術をも越えたミューズであるばるぼらと、自身の美意識と破滅的な願望によって彼女に惹かれてやまない美倉の物語のようでもある。



ばるぼらの母親と名乗る女性が現れ、彼女の名はムネーモシュネーだと言う。

彼女の持つニセモノとしか思えない絵画を貰った美倉。

ガラクタと思っていたモノがピカソの行方不明になっていた幻の絵画だと言われたり。

太った叔母さんの下半身の画を持ち出し、「これはねモナリザの上半身と対になってるもう一枚だよ。五百年前ダビンチから譲ってもらったんだ」等と言い出すシーンは間違いなく、芸術に対するアイロニーだろう。


最後には松本麗児なんてマンガ家が出てきて、美倉が残した手記に関して語ってジ・エンド。


松本麗児はくろねこ教授の誤字じゃないよ。

『ばるぼら』に出て来たまんまの漢字。



手塚治虫(神)先生はオコサマ向け、『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』の作者でも有るけど、大人向けのマンガでも多数作品を残してる。

その中ではマイナーな方。

特に一風変わった作風の作品と言えるでしょう。

メジャーなのはやはり『アドルフに告ぐ』サスペンス風味も有る歴史もの。


実は割と背徳的な作品も多い。


エロいシーンにショックを受けたと言う人も居る『奇子』

残酷シーンや同性愛シーンで有名『MW』

差別や人間の怖さを真っ向から書いた『きりひと賛歌』

ディストピア的SF『ガラスの城の記録』


くろねこ教授が個人的に大好きなのは。


『地球を呑む』

オロカな男が支配するこの世界を壊してしまおうとする美女たちの物語。

そこに出て来るのが酒が好きで好きで、美女に興味はねーやという主人公。

痛快だったり、背徳的だったり、色んな側面を見せる物語。


『アトム今昔物語』

鉄腕アトムの外伝のようでいて、全く異質な面を見せる。

ロボットが人権を持つに至るSF的物語を実際の有色人種差別と絡めて書き出す危険な作品。


中でも『ばるぼら』は残酷シーンこそ少ないモノの、耽美趣味と幻想の入り混じる独特な作品。

マンガというジャンルでは似たような作品てあまりお目にかかれない。


なんだか『ばるぼら』の紹介というより手塚治虫(神)先生の大人向けマンガ紹介になってしまった。


紹介したタイトルは全て一読の価値があると信じてます。

なにかの機会が有ったら読んだコト無い人は読んでみてください。


ではでは。

くろねこ教授でした。

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