第31話 コミック『パームシリーズ』その2
はい。
くろねこ教授です。
今回はコミック『パームシリーズ』の続き。
書名:パーム6~10『スタンダードデイタイム SIDE-1、SIDE-2』『星の歴史Ⅰ~Ⅲ』
作者:獸木野生(以前は伸たまき名義)
現在入手し易い文庫版でいうと4~6巻。
『スタンダードデイタイム STANDARD DAYTIME』
強盗に父親を殺された幼い少女ティナ。
犯人は白人で長身でブロンド。
ジェームズと同じタイプ。
ティナに怯えられショックを受けるジェームズくん。
「あいつ何考えてんの?
まさか自分が近所の優しいお兄さんに見えるとでも思ってんじゃないでしょうね?!
黒服で三白眼で殺気をしょった大男がニコリともしないで立ってたら、そりゃ誰が見たって怖いわよ!!」
アンジェラちゃんは辛辣。
なにがあっても動じない彼だが、幼女に怯えられるのはシンドかった。
「……あんな小さな女の子に怖がられるくらいなら死んだ方がマシだ……」
カーターさんは名セリフ。
「ある朝目を覚ますと窓が開いていて、自分が長い間待ち望んでいたものの中に居る事に気付くんです。
そんな日がティナにもきっと来ますよ」
SIDE-2はアンディくんの高校ライフ。
クラスで浮いてたり、女教師がジェームス君を見て顔を赤らめてたり。
アンディのアフリカでの知人、オクヨルンの再登場。
「何か妖精のようだったよ。
クリスマスともなると不思議な事が起こるんだな」
で締め。
『星の歴史―殺人衝動― HISTORY OF PLANET or HOMICIDAL IMPULSE』
もしもあなたが男性で少し読んでみようかなと思ってるなら、『星の歴史』から読むのもいいかも。
なんせ少女マンガ誌に連載。多少のBL臭さが漂ってる。
男が読みづらい部分もあったりして。
でもここからなら平気。
くろねこ教授は野郎の知人に『星の歴史』から読ませて数人に「面白い」と言わせてるのです。
ジェームスくんの居た刑務所編。
黒人青年ボアズ・ウルマンの視点で語られる。
―質屋のウインドウの中に有ったんだ。そいつは俺のハーモニカだった―
「あんたがここのボスか」
どでかい大男の黒人に近づくボアズ。
「ボスはそいつだ」
「……やあ」
挨拶したのは白人、ジェームズくん。
「シロになぞのさばらせてたまるか」
ボアズは吼えますが、刑務所の面々は困ったちゃんが来たなーとシカトを決め込みます。
いつの間にかボアズの姉は腐った親の元を抜け出し、水商売ではあるもののたくましく生きていた。
そのきっかけとなった詩集を差し入れされる。
―つまらぬ人間などこの世にいない。人の運命は星の歴史にひとしいもの。
ひとつひとつがつねに非凡で独特で、それに似ている星はない―
「これを書いたヤツはアメリカ人じゃねえ。
ハーレムを知らねえんだ」
反発するボアズ。
だが。
目を閉じると声が聞こえる。
お前はクズだ。クズだ。クズだ。
質屋のウインドウを割って盗みを働いて以来こびり付いてる言葉。
だけど。
―つまらぬ人間などこの世にいない―
お前はクズだ。
―ひとつひとつがつねに非凡で独特で―
お前はクズだ。
―それに似ている星はない―
―星の歴史―
いつの間にか、ボアズは「星の歴史」とつぶやくようになっていた。
Ⅰのラストは今読んでも涙せずにはいられないシーン。
「俺はクズだったしよ……
親父もおふくろも他のいろんな奴もそう言ってた」
「だけど奴は変なヤツで相手がスズメでもクズでも知ったこっちゃねえ。
最初に会った時……
ヤツは俺にやあって言った。
ふつうの感じでさ」
「弁護士さん
今ここに紙クズが投げ込まれたとして、
ヤツがその紙クズに挨拶するとこを考えてみなよ。
やあってな。
クズだって、飛び上がって人間にならねえわけにはいかねえぜ」
「……あいつはすげえ奴なんだ。
俺達の誰とも違う。
刑務所を出たならヤツも仲間を見つけるだろう。
いろんな奴がアイツを待ってる」
「……だが、
俺にはヤツだけなんだよ……」
「ボアズ……
彼が本当に君の言ったような男なら、
けっして君を忘れたりしないさ。
ここを出たならまっさきに訪ねていってごらん。
……きっと喜んで君を迎えてくれるはずだ」
―きっと―
……きっと……
Ⅱからは殺し屋サロニーの出番。
刑務所でたまたま捕まった普通のサラリーマンの振りをした男。
彼は……
『お豆の半分』で語られたハイジャック事件に時系列が追い付いたり。
暗闇でジェームズとアンディが手のひらをあわせると光が照らす。
そんな超自然現象が起きたり。
サロニーがボアズやカーターを攫ったり。
「あんたの目当てはなんだ?……」
「俺がブライアンを追う訳はたった一つ。
奴が見事な雄だからだ」
ボアズは―星の歴史―と唱える。
が。
目の前に現れたのは創世記の地球。
闇と衝突と血のようなマグマ。
まるで地獄だとさえ連想するボアズ。
その地表から叫び声が聞こえる……
Ⅲはカーターさんが警察に乗り込んだり。
殺し屋サロニーがジェームズ、マフィアネガットファミリーの頭になりかねない人間を消してくれるならそれもおっけーと放置していたシャーロット警部。
「ボアズ・ウルマンが人質として監禁されわたしの助手ともども殺されようとしているのは明らかだ。
ここで大義名分ふりかざして口をぬぐっていられると思うなら好きにするがいい。
全てが終わって真実が羅列された時、万人をけむに巻けるか頭を冷やして考えてみるんだな。
さあヘリを出すのかいますぐ決めろ。
ご覧の通りわたしは今気分がすぐれんのでね。
これ以上待たせるとあんたの面に反吐を吐きかけるぞ」
事件は終わって、ボアズくんとカーターさんの会話。
「俺ジェームズの事はよく知らねえんだよ。
どんな風に生きて来た人間か」
「わたしも知らんよ」
「だが今の彼を知っている。
彼と出会えたのは幸運だった」
「……俺もだ」
「失くしたものが戻って来た」
「……俺もだ」
ボアズはNYへと旅立つ。
ジェームズがボアズに渡した餞別は。
ハーモニカ。
はい。
ここまで。
とりあえず『パームシリーズ』語りは一端ここまでで終わりにします。
そのうち続きを書くことも有るでしょう。
振り返るとどれだけ、凄まじい情報量、作り込みとセンスで出来てるコミックなのか。
くろねこ教授程度には想像もつきません。
それでも自分が相当に思い入れ有ることだけは確か。
『あるはずのない海』のラストを読んだのはもう相当ムカシ。
それからずっと好きなコミックの一番手は『パームシリーズ』だったのです。
勿論、瞬間的に超えた―ってのは有って『めぞん一刻』のクライマックスとか、『デビルマンレディー』の折り返しとか『寄生獣』の中盤とか『多重人格探偵サイコ』の序盤とか『吼えろペン』とか『進撃の巨人』の最初とか。
一時、これが今一番面白いとゆーのは有るのだけど。
しばらく経って振り返ると結局『パーム』最強になってしまう。
そんなカンジ。
ではでは。
くろねこ教授でした。
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