第25話 日本のマンガ版『スパイダーマン』

はい。

くろねこ教授です。


予告通り日本のマンガ版『スパイダーマン』の話をするぜいっ。


日本のマンガも幾つか有って、つい最近も『スパイダーマン・偽りの赤』とかゆーのが発売されたりしてますが。


今回は1970年に発表されたヤツ。

作画:池上遼一

ストーリー:平井和正

というマンガ。


池上遼一先生はさすがに説明不要でしょう。

青年誌コミック作家の第一人者。

リアルタッチのイラストの様な絵でマンガを書く。

『HEAT -灼熱-』『サンクチュアリ』『クライングフリーマン』と代表作は多い。

その圧倒的なビジュアルは評価も高いけど、一方でコピー切り張り多いじゃんと批判の声も有る。

このころはまだ新人に近い。


平井和正先生。

カクヨムユーザーな人達はどの位知ってるのだろう。

実は『エイトマン』の原作者だったりもする超ベテラン。

小説家としては『ウルウガイシリーズ』『幻魔大戦』が有名かな。

くろねこ教授は若い頃熱狂的な信者でした。

2015年にお亡くなりに。

連載時点で既にそれなりの大物。

その頃『狼男だよ』の改竄事件が有って。

小説の内容を勝手に編集者が書き換えたと言う件で裁判沙汰に。

本人によるとその後出版社から干された。

仕事の依頼が来なくなったらしい。

それでヒマ&収入の無かった平井先生に友人だった編集者が声を掛けたというエピソード付き。


なかなか不思議な大物コンビのマンガ連載。

連載開始当初はマーベルコミックに沿っていた内容。

徐々に青春の懊悩やヒーローの孤独を押し出すようになっていく。

池上遼一先生もまだ新人。ストーリーを一人で作るのに不安が有ったらしく、平井和正先生がストーリー担当として協力。現在で言うとシナリオ協力とかそんなポジションですね。


さて、くろねこ教授はこのマンガ版、大分レアで珍品と思っていたのですが。

調べてみると何度も出版されてるな。

最初がサンコミック全八巻。

くろねこ教授が目を通したのもコレ。

その後朝日ソノラマから二回、メディアファクトリーからも二回出版されてる。

そっか。

何度も映画化されてるからね。

その度に、現在出版すれば意外と売れるかもと発売されてるのか。

なら予想したより目を通した人多いのかも。


さて、マンガ版『スパイダーマン』ですが。

かなり陰鬱な内容です。


主人公は小森ユウ、少々頭のデキが良い高校生。

彼がスパイダーマンになるのですが、

スパイダーマン、世間に叩かれること、叩かれること。

マスコミも芸能人も、ユウがお世話になってるおばさんも。

みんなスパイダーマンが世の中の敵と言い放題。

まあ、原典のスパイダーマンでもマスコミに悪く言われたりもするのですが。

トーゼン何人かの分かってくれる人がいる、何処かで誤解が解ける。

ところがこのマンガ版では最後までその誤解は解けない。

小森ユウは夜の街で芸能人に会い、毒を吐く姿を目の当りに。

「これがマスコミ有名人の正体なのか。あまりにみにくくいやらしい。

 でもこれで分かった。売名家呼ばわりされてショックを受け悩み続けたスパイダーマンはまるで阿呆だったんだ。こんな厚顔無恥な売名家に慣れ切ってるマスコミがスパイダーマンを売名病患者扱いするのは当然だ」

誤解を解く気すら無くします。

そして高校でも、婦女暴行の疑いをかけられ小森ユウ本人も孤立していきます。


こう重ったい内容だとなかなかページをめくる手も進まないモノなのですが。

そこがカズマサ平井マジックと言うか。

グイグイと読ませてしまう。


『スパイダーマンの影』とか今でも面白いと思う。

小森ユウは事故で死にかけた少年に緊急で輸血を提供。

ユウの血を受けた少年はスパイダー能力に目ざめる。

しかもスパイダーマンを名乗り活動を始める。

マスコミに公害狩り宣言、製鉄企業を襲撃。

世間を味方につける。

しかしその行動には裏があった。


スパイダーマンに成りすます少年、北野光夫の悪魔的な格好良さと卑劣さ。

その姉、雪子の薄幸ぶりが印象に残るシナリオ。

その後、平井先生は自分の小説『アダルトウルフガイシリーズ』でもリライトして話の筋を再使用してますね。


あとはユウくんの青春の懊悩っぷりがスゴイ。

なんつーかもう、思春期だね。


少女の裸体なんかを頭に思い浮かべて。

「どうしてなんだ……おれはこんな妄想ばかり」

「おれは、おれはだめな人間なのか……」

「いや、そうじゃない……おれは……」

「おれはだめな人間なんかじゃない!」

「おれはスパイダーマンなのだ」

と夜の街に走り出すスパイダーマン。

ビルの間を飛び廻りながら。

「はははは! おれは超人なんだ!

 見ろ! おれを見ろ!

 おれは世界一強い男なのだ!」

「この偉大なおれにいったい誰が歯向かう事ができる!?

 もしその気ならおれは全世界をも征服する事ができるのだ!」

「でもおれはそんな事は望まない!」

「おれはいつでも弱い人間たちの味方だ」

「みすぼらしいちっぽけな人間どもよ……」

「この偉大なスパイダーマンに救いを求めるがいい!」

東京タワーの上に立ち、腕を広げるスパイダーマン。


分かった、もう分かったから落ち着けよ。

と背中を叩いてあげたくなりますね。


新幹線の脇を駆けていく時も凄い。


「はははは! おれはスパイダーマンだ」

「おれは強い! おれはヒーローだ! おれは超人だ!」

「おれは神々の愛でし古代の超人英雄の再来だ!」

「おれは自由なんだ!」

「おれは修羅場へと韋駄天走りに駆けつけるケンカ好きだ!」

「事の理非はどうでもいい。おれが求めるのは荒れ狂い暴れまくるケンカ沙汰だ」

「だから今のおれの顔は闘争のギラつく喜びに酔った笑いを浮かべている!」


こんなセリフを叫びながら疾走するスパイダーマン。

やべー。


普通ならさすがに引いちゃうシーンですが。

無理矢理読ませちゃうんだよな、このマンガ。


とゆー事で、マンガ版『スパイダーマン』でした。


気になる方がいたら、読んでみてね。

現在でもメディアファクトリー版は手に入るようです。


ではでは。

くろねこ教授でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る