441話 治療

 俺がリンだと思い込んで襲った相手は、ルンだった。

 何とかごまかせたと思ったのだが――


「おいーっす。コウタっち、一晩寝て元気になったか? ――って、なんじゃこりゃああぁっ!!」


 リンが部屋に入ってきた。

 そして、ベッドの上を見て絶叫する。


「ど、どうしたんだよ?」


「どうしたじゃねぇ! コウタっち、ルンに手を出しやがったな!?」


「ま、まぁそうだが……」


「ルンは奥手なんだ! そんな子を襲うとか、正気かよ!」


 リンが俺を非難する。

 確かに、ルンは奥手なタイプだ。

 昨日が初めてだったようだし、男と絡んだ経験はほとんどなかったのだろう。


「わ、悪かったよ。だけどな、ルンも満足はしてくれたんだ。なぁ? ルン」


「はいですぅ。すごく良かったですぅ」


「なっ……。そ、そうなのか?」


「ああ。だから、許してくれ」


「はあー。分かったよ。そういうことなら仕方ないな」


 リンはため息をつきながらも納得してくれる。

 よかった。

 一時はどうなるかと思ったぜ。


「ふぁああ……。なんだか騒がしいですね……」


 シルヴィが起きた。

 まぁ、周囲がこれほどうるさければ寝てはいられないか。


「おはよう、シルヴィ」


「あっ、おはようございます。ご主人様」


「昨晩はよく眠れたか?」


「はい、おかげさまで。それにしても、この部屋はすごい有様ですね。何があったんですか?」


「えっと……」


 俺は言葉に詰まる。

 まさか、シルヴィが寝ている横でハッスルしていましたとは言えない。


「いや、ちょっとな……」


「くんくん……。なんだかすごく、オスの匂いがしますね」


「ぎくっ」


 シルヴィは白狼族だ。

 普通の人族よりも嗅覚が優れている。

 俺が発した残り香を察知されてしまったようだ。


「おや、ご主人様は何か隠し事をしておいでですか?」


「い、いや別に……」


「ううむ……。怪しいですねぇ。まさか、わたしが寝ている間に、誰かといちゃいちゃしてたんじゃないでしょうね?」


「そ、それは……」


 まずいな。

 このままでは追求されてしまう。

 ここは何とか誤魔化さないと――


「ち、違うぞ! 俺がしたのはいちゃいちゃではなく、えっと……そう、治療だ!」


「治療? どういう意味でしょうか?」


「実は、『英雄』には副作用があってな……。かくがくしかじか……」


 俺はシルヴィたちに事情を話す。

 我慢しすぎると金玉が爆発するという話だ。

 ちなみに、夢で見た女神様の件は伏せておいた。


「な、なんと……。そんなことが……」


「そうらしい。困ったものだよ」


「うう……。頭痛くなってきました。あまりのことに理解が追いつかないです」


 シルヴィが頭を抱える。

 まぁ、いきなりこんな話をされても信じられないよな。


「でも、それならばわたしも力になります!」


「ん? ――おおぉっ!?」


 シルヴィが俺のズボンをズリ下ろしてきた。

 朝から元気なモノがあらわになる。


「へへっ。もちろんあたいも手伝うぜ」


「ワタシもですぅ。コウタさまに満足してもらえるよう、がんばりますねぇ」


 リンとルンも協力してくれるようだ。


「ふはははは! よし、朝から4人で楽しもうか!!」


 こうして俺は、朝から発散したのだった。

 これで寝込んでいた間に溜まっていたものの放出はひと段落だ。

 次にするべきことをしていくことにしよう。

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